アマゾンでも気をつけて購入した方がいい理由
(2)のソウル市が有害物質を検出したという件に関しては、私の知識では評価ができません。しかし、なぜソウル市だけで有害物質が検出されるのかが不可解です。このような報道がされれば、各国の検査機関や市民団体が追試をしていると思いますが、今のところ、そちらから検出されたという発表はありません。
ソウル市の検査結果はこちらから見ることができます。
※参考:(資料提供)ソウル市、2ヶ月間毎週海外直球製品安全性検査を実施… 10個中4個の有害物質 – ソウル市公式サイト(2024年5月28日配信)
発表資料(PDF)にある商品を日本のTemuで探してみましたが見つかりませんでした。すでに撤去済みなのかもしれません。さらに、日本のアマゾンで探してみると、何点か、同じ商品ではないかと思えるものを見つけました。
こちらはソウル市の発表にある商品です。

ソウル市により、可塑剤「DBP」が基準値の380倍も使われていたと指摘された商品。出典:ソウル市公式サイト報道資料
こちらは、アマゾンで販売されている商品です。
見た目だけで判断をしているため、本当に同じ商品であるかどうかは断定できませんが、非常によく似ています。ソウル市の検査で有害物質が検出された商品と非常によく似た商品が日本のアマゾンで販売されています。これはどういうことなのでしょうか。もう少し、他国の検査機関の発表がなければなんとも言えない情報です。
実際、TemuやSHEINに商品を提供している出品業者の2割程度がアマゾンのマーケットプレイスにも出品をしています。ブランド名や商品名は変えていることがありますが、同じ商品がTemuとアマゾンで売られている例は増えているのです。なぜ、Temuでは有害物質が発見されているのに、アマゾンでは堂々と販売されているのでしょうか。
「Temuは有害物質とか怖いから、アマゾンで買う」と言っている方がいたら、ぜひ「アマゾンでも気をつけて購入した方がいい」と教えてあげてください。
(3)の出品業者のTemuへの集団抗議は、多くのメディアが事実を伝えるだけにとどめていますが、日本のSNSではもっぱら「Temuは消費者を騙し、出品業者も騙し、二重に儲けている」という文脈になっています。
今、中国では悪質業者の大掃除が行われています。ECにはたくさんの出品業者が参加するため、中には悪質な業者もたくさんいます。その多くは、商品ページでいいことを言っておきながら、内容の異なる商品を販売するというものです。
例えば、アマゾンにもそんな商品はたくさんあります。
これは、SSD(メモリーディスク)で容量が30TBあるものが7,500円程度で販売されている例です。SSDは容量が大きいものでも2TBぐらいが最大で、そのような製品だと2万円から3万円はします。それが、価格は半分以下で容量は15倍なのです。
レビューを読むと、「認識しない」「実際は100GB程度しか保存できない」というものが多くあります。多くの方が返品をしているようですが、このような消費者を騙す商品がたくさんあります。
こういうことをする業者はタオバオの時代からたくさんいて、EC運営にとっては頭痛の種になっていました。タオバオは苦情の多い業者の出品を禁止するという形で排除に乗り出しました。すると、同時期にピンドードーが成長を始めたため、多くの悪質業者がピンドードーへ移りました。
そして、Temuでは、このような業者の商品を採用しないという方針を取り、それでも消費者に渡った場合は「即返金、商品返送は不要」にしています。悪質業者にしてみれば、お金は入ってこない、商品は戻ってこないになるわけですが、これにより悪質業者を一掃しようとしているのです。Temuを国際的なECに成長させ、株式上場させるためには、ここで一掃しておく必要があるのです。
そのような悪質業者がTemuの本社に大挙して押しかけて抗議をしたという話です。Temuではすぐに警察を呼んで排除してもらいました。つまり、悪質業者を排除するための戦いをしているのです。消費者にとっては、悪いことではありません。
もちろん、それでも「Temuは怖いから使わない」と判断されるのは自由です。同じものがアマゾンでも2倍ぐらいの価格で販売されているので、それが安心できるというのであればそちらを買うのももちろん個人の自由です。