電力不足の追い風
防衛産業だけではそこまで強くないという話をしましたが、やはり株の話なので最終的に儲からなければなりません。
利益が出て初めて株価に勢いつくことになります。
そういう意味では三菱重工は今儲かっています。
それが「エナジー」の分野です。
これは三菱重工の直近の四半期の業績ですが、普通は売上や利益を見るのですが、もっと端的に表しているところが「受注高」です。
自衛隊の話でもそうですが、戦闘機や戦車の製造を受注して、それを作って納入した段階で売上が立ちます。
そこからコストを引いたものが利益となりますが、受注が分かっていれば売上が立つ前にその先の業績が事実上分かっているということになります。
プロのアナリストや投資家は間違いなくこの受注高を見て判断します。
そんな中でこの「エナジー」の部分は+4,176億円と、去年の同じ四半期の倍くらいになっています。
なぜ伸びたかというと、“GTCCは主に米州で受注が大幅に増加”とあります。
「GTCC」とは、「ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント」というものです。
三菱重工はとにかく大きくて重いものを作っていて、戦闘機などもそうですし、原子力発電にも関わっていますが、天然ガスを使ったガスタービンによる発電機も作っています。
ここまで巨大なガスタービンを作れる企業は世界でも限られていて、三菱重工とアメリカのGE、ドイツのシーメンスくらいです。
三菱重工はその超巨大なシステムを高い効率性で発電ができるように開発して、それが注目されてアメリカで売れて、世界でもシェアを伸ばしているということです。
三菱重工は日立とつながりが強く、協力して技術開発したり事業を渡しあったりしています。
その中でガスタービンは三菱重工が取得することになりました。
それを受けてシェアも上がり、技術も集約されてより良いものを開発することに力を注ぐことができました。
シェアは高まったとしても、市場が大きくなっているのかということも重要です。
火力発電はアメリカでこれから伸びていくでしょうか。
特にバイデン政権下では環境に負荷をかけない発電方式が重視されています。
火力発電は化石燃料を使って二酸化炭素を出すので、あまり歓迎されないのではないかと思わるかもしれませんが、ここにも”揺り戻し”の話があります。
アメリカでも再生可能エネルギーが良いとされていますが、これはすぐに調達できるものではありません。
太陽光は安定電源としては難しいものがありますし、原子力は建設場所を決めるのにかなり時間がかかるものです。
したがって、電力は増産しようとしてもすぐに増産できるものではありません。
そんな中でアメリカでは電力不足となっています。
なぜなら、AIを動かすために大量のデータセンターが必要で、データセンター自体にも電力が必要で、さらにデータセンターが放出する熱を冷やすためにも多くの電力を使うからです。
AIが活性化してデータセンターがどんどんできるにしたがって電力が必要となり、再生可能エネルギーでは追い付かなくなってしまいました。
となると、火力発電が手早く電力を確保できるということになり、そんな中でより効率よく、環境負荷も比較的少ないものが三菱重工のものということになります。
アメリカではシェールガス革命というものが起き、硬い岩盤層の中にある天然ガスを上手く取る技術が開発されました。
多くの天然ガスが取れるようになったので、それを使って発電し、AI・半導体の電力需要を賄おうという動きが起こっていて、その恩恵を受ける会社の一つが三菱重工ということです。
三菱重工はエネルギー分野でも防衛産業でも外部環境で追い風が吹いていて、業績、株価が上がっている状況です。
大統領選もありますし、AIの需要もまだまだ増えると思われます。
防衛も基本的には右肩上がりなので、しばらくは業績は拡大するのではないかと思われ、株価もそれに伴って上がってくると考えられます。
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