トランプが地滑り的に勝利してからも、日本では米国内で起こっていることは伝えられていない。共和党が上下両院を制し「レッドウェーブ」とも呼べる政権基盤を確立する一方で、民主党支持者の間ではパニックと怒りが広がり、抗議活動や移住希望者の増加といった混乱が見られる。これを詳しく紹介する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年11月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
トランプ勝利後、アメリカで何が起きているのか
トランプの地滑り勝利後のアメリカ国内の状況について解説したい。
大統領選挙の最終結果が出た。選挙人獲得数は、ハリス226人、トランプ312人と歴史的にもまれな大差でトランプが勝利した。また、有権者の総得票数でも、ハリス48.1%、トランプ50.2%とトランプが上回っている。まさにトランプは国民からの付託を受けた大統領となった。
さらに共和党は上下両院も過半数を制し、まさに大統領府、上院、下院を共和党が独占するレッドウェーブと呼べるような状況になっている。凄まじい躍進だ。これでトランプは、自分の実現したい政策は、大きな抵抗なしに実現できるフリーハンドの力を手にした。
米国内の状況、いまだにショック状態
前回の記事でも書いたように、ここまで大差がついてトランプが圧勝すると、民主党はどんな手を使っても選挙の結果を覆すことは不可能だ。しかし、それにもかかわらず、ハリスに副大統領を辞任させ、高齢の最高裁判事と入れ替えてハリスを任命し、ハリスの主導で最高裁が選挙結果に異議を唱えるというような、現実性のない案まで出てきている。もちろん民主党がこれを実行することはないだろうが、このくらい民主党はパニック状態に陥っている。
いまアメリカ国内では、大規模な暴動や抗議運動は起こっていない。しかし、11月8日に発表された世論調査会社、「YouGov/Economist」の調査によると、カマラ・ハリスに投票した人の47%が、トランプは正当な大統領にはなれないと考えていることが明らかになった。また、カマラ・ハリス支持者の半数近くが、ドナルド・トランプが選挙で合法的に勝利したとは考えていない。
つまり、不正があったと見ている。トランプが正当な大統領であることを認めていないのだ。
また、別の調査によれば、ハリス支持の有権者の54%が国外に移住したいと考えている。
ハリスに投票した有権者のうち、5%が「必ず移住する」、5%が「おそらく移住する」と答えている。また、44%は移住を希望しているが、「おそらく移住しない」が27%、「間違いなく移住しない」は17%だった。引っ越したいと思っているが、その可能性は低いという人のうち、経済的な理由、家族、地域社会との結びつきが、その場所に留まり続ける理由となっている。
引っ越しを考えている、または計画している人のうち、90%が他国、80%が他州への引っ越しを検討している。移住を検討している国のトップはカナダ(41%)、イギリス(19%)、メキシコ(16%)。 移住を検討している州のトップは、カリフォルニア州(14%)、ニューヨーク州(8%)、コロラド州(8%)などの民主党支持の州であった。
もし仮に、ハリス支持の有権者の10%がアメリカ国外に移住することになったとしても、実に莫大な人口流出となる。
妊娠中絶が厳しくなることが主な理由
同調査によれば、移住を検討する動機となる問題の第1位は妊娠中絶である。中絶が連邦政府によって禁止される可能性への懸念が61%、人種的不平等の拡大懸念が55%、進歩的権利が覆される可能性への不満が54%であった。これが、移住を望む理由の上位を占めている。
さらに、医療アクセスの低下(54%)、社会的不平等の拡大(53%)も懸念している。 銃規制の欠如(50%)、環境規制緩和(43%)、公教育の弱体化(44%)も大きな懸念材料だ。
ちなみに、中絶は10の州で投票対象となった。そのうち8つの州では、有権者の過半数が妊娠中絶支持の立場を支持し、1つの州(サウスダコタ州)では有権者の過半数が妊娠中絶支持の立場を拒否した。
ミズーリ州、モンタナ州、アリゾナ州、ネバダ州の赤い州では、有権者が圧倒的に中絶の「権利」を支持した。
もちろんこれは、「ロー対ウェイド裁判」が覆されて以来、全国的な傾向を引き継いでいるだけである。人工妊娠中絶が投票対象となった場合、賛成派はほぼ毎回敗北しているのだ。