「トランプ再選はないので、最長でも4年間我慢すれば…」との考えのリスクは、トランプ氏が途中で降板し、バンス副大統領が受け継いだ場合で、この場合は最長で12年「トランプ型政策」が続く可能性があります。
トランプ支援勢力が副大統領候補にイエール大学出の若い白人男性、と条件を付けたのは、トランプ氏が途中降板する可能性も考えてのことと言います。
米国でのEVの生産シェアはテスラがトップで、2位が現代自動車、以下フォード、GMと続いています。イーロン・マスク氏はテスラも影響を受けますが、ライバルがより大きな打撃を受けると言い、また長い目で見ればテスラの利益になるとして、この案を支持しています。
化石燃料需要増は一時的
トランプ・ショックとして大きいのは、再びパリ協定から離脱して化石燃料の増産を図り、世界一の米国石油産業をより強固にし、国民に安いエネルギーコストを提供することにあります。
トランプ氏はすでに欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談し、ロシアから入らなくなる天然ガスの代替供給を米国が担うことを約束したといい、抜け目がありません。
これも米国第一主義の一環で、米国産業や国民には良いかもしれませんが、これが地球温暖化を早め、米国も含めて異常気象、自然災害をもたらすことは米国内でも広く認識しています。
このため、市場もエネルギー関連株の買いには慎重で、再生可能エネルギー関連の流れを止める可能性も小さいとみられます。
そうなると価格維持のために減産を続けてきたOPECは面白くありません。OPECが減産しても米国の増産で価格が下落し、石油やガスの世界シェアがますます米国に奪われ、OPECのシェア低下、発言力低下につながるからです。
原油価格が下落すると、日本の再エネへの転換がそれだけ遅れる可能性があります。
日本産業には円安の影響大
日本の産業界にとって、トランプ政権の影響という点では、日本製品への関税賦課と円安だとみられます。
米国が中国のみならず、世界からの輸入品にもすべて関税を課すのは、スーパー301条を超えていて、法的に認められるか議論の余地があります。その点、もう一方の円安ドル高はトランプ氏の望みに反して進行する可能性が高いとみられます。
トランプ氏は「ドル高は米国産業には大惨事」と認識し、FRBに圧力をかけて利下げをし、ドル安にしたいようです。しかし、彼の減税や関税策は米国のインフレ圧力となり、債券市場はすでにこれを織り込み始めました。
しかもトランプ政策を実施すれば26年度(25年10月スタート)からの10年間で米国の財政赤字は7.5兆ドルも増える、という超党派の予算委員会の試算があります。






