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トランプ政権が揺さぶるEV市場…日本にとっては追い風?自動車産業以外にも大きな恩恵=斎藤満

トランプ政権の政策転換が再び世界経済に波紋を広げています。EV優遇策の廃止や化石燃料増産計画により、テスラや韓国の電池産業が直撃を受ける一方、日本の自動車業界やハイブリッド車市場には追い風が吹く可能性も。世界と日本への影響を深掘りします。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2024年11月22日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

トランプ政権誕生で「テスラ株」は急騰

EVのテスラ社のオーナー、イーロン・マスク氏がトランプ政権に加わることで、テスラ社の株価は最高値近くにまで急騰しています。今年4月の138ドル台から350ドルまで半年で2.5倍以上に上昇しました。EVのテスラ社に良い政策が期待されたためです。実際、トランプ政権は、自動運転での規制緩和を考えているといいます。

TESLA INC<TSLA> 日足(SBI証券提供)

TESLA INC<TSLA> 日足(SBI証券提供)

しかしその一方で、ロイター通信によるとトランプ氏の政権移行チームは、バイデン政権が2022年に打ち出した「インフレ抑制法」の柱となっているEV購入者への最大7,500ドルの税控除を廃止する計画といいます。テスラ社にも足枷になるこの措置に対して、マスクCEOも支持したといいます。

再選がないのでトランプ政権は最長でも4年間となります。その間息を止めて我慢するには影響が大きい政策転換が予定されています。それでなくともEVの需要減速が懸念される中で、この税控除が廃止されればEV需要はさらに落ち込む可能性があります。温暖化や脱炭素に無関心なトランプ氏は化石燃料の増産を促し、価格引き下げを検討しています。

日本の産業に与える影響にも注目してみましょう。

EV出遅れ日本には幸い

今回の税額控除廃止の影響を受けるのは米国のEVです。日本企業はすでに日産リーフが適用除外となっているので、今回の廃止措置が取られても、日本の自動車メーカーには直接影響は出ません。EVでの米国現地生産が遅れていた分が幸いした形です。

バイデン政権には外国企業や高価格車を購入できる人への優遇に反発もあり、対象モデルは23年の22モデルから24年には19モデル、さらに13モデルと縮小していました。

むしろ米国市場でEVの優遇がなくなり、需要が減る分、日本が得意とするハイブリッド車への需要シフトが期待されます。日本車の米国向け輸出増も期待されます。

電池の米国生産進める韓国に打撃

このニュースを受けて先週、韓国株式市場ではLGエナジーソリューションズなど電池関連銘柄の株価が急落しました。

実際、このニュースに衝撃を受けているのが韓国の電池メーカー3社です。LGエナジーソリューションズ、SKオン、サムスンSDIは最近、米国で税控除を前提に、米国への大規模な投資を決めています。この3社による対米投資額は50兆ウォンにのぼります。

EVの生産コストのうち約4割を電池が占めていて、電池需要は当然EVの需要に大きく左右されます。日本の化学メーカーでもリチウム電池の現地生産のために米国への投資を決めたところがあります。

この措置、まだ決定ではなく、業界団体が税控除の継続を訴えていますが、トランプ政権はこの補助金によって米国財政が浪費されていると批判していました。

Next: 世界と日本経済への影響は?トランプ政権がもたらす変化

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