強みを再構築できるか
資生堂の業績の話に戻りますと、実は私はこれから数年の資生堂の業績について悲観はしていません。
これまで資生堂は、日本ではコスト削減を行い、一方で中国や他の地域では伸ばすとしてきましたが、中国・トラベルリテールの高い成長にも見直しが必要、米州・欧州・アジアパシフィックでは成長よりも収益性の向上が必要とし、完全に守りに入っている状況です。
魚谷会長は2024年いっぱいで辞めて、次のCEOが就任することになっています。
役員が変わるということは、これまでの失敗を失敗として扱い、次に進もうとしているのではないかということが見て取れます。
業績の推移を見ると、売上に関してはそれほど落ちているわけではなく、一方で(M&Aなどによる)コストがかさんでしまっていた部分があったと思います。
人員を削減する話もありましたが、日本・海外も含めてうまく作用していないコストを見直す時だと思います。
また、ブランドも多く作りすぎているように見えるので、そこも一気に整理することが大事ではないでしょうか。
一時的にコストを削ることによって利益を復活させることは十分にできると思います。
ただし、それで株価が戻るかどうかは別の話です。

資生堂<4911> 週足(SBI証券提供)
資生堂の株価はここ5年で65%も下がっています。
現在の赤字スレスレのところからは利益は回復すると思いますが、利益が2016年の頃に戻ったとしてもPERは35倍であり、ここから株価が上がっていくためにはさらにそこから先の成長を描けなければなりません。
日本でも韓国コスメやプチプラ化粧品、高いところでは美容整形なども台頭してきていますし、中国は景気が悪く、地元企業も参入してきています。
欧米ではそもそもあまり上手くいっておらず、八方ふさがりのように見えます。
その中で資生堂が使える強みとは何なのでしょうか。
私が可能性を感じるところは、「研究開発力」です。
資生堂の商品自体は質がよく、ネットのレビューなどでも評価が高いです。
しかし、それが若い人には伝わっていないように思えますし、少し高価なのでハードルが高く、そのハードルを越えられるようにプッシュできていないのではないかと思います。
かつて美容部員がやっていたお客さんとの接点をどうやって取り戻せるかが資生堂にとっての鍵になるのではないでしょうか。
もちろんSNSなどによるアピールも行っているでしょうが、全く上手くいっていないように思います。
唯一の解決策ではないと思いますが、顧客にアピールする方法を本気で見つけていかないと資生堂に先は無いと思います。
昔からのお客さんもいて、そこで売上が支えられている以上、潰れてしまうようなこともすぐにはないと思いますが、成長するためにはお客さんとの接点を取りもどすことが必要です。
かつてはテレビCMにお金をかけていればブランドを構築できていましたが、時代は変わって、ネットの口コミやインフルエンサーの力など、訴求力が分散しました。
その時代をどう乗りこなすか、仮にモノは良いとするならどうやってお客さんとの接点を作っていくかということが、これからの資生堂にとってのマーケティング戦略になると思います。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年11月25日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。