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資生堂、株価5年で65%下落…長期投資家は買いか?赤字寸前に陥った原因と今後の成長性=栫井駿介

今回は資生堂<4911>についてです。資生堂の業績が厳しいという報道が出ていますが、なぜこのような厳しい状況となってしまったのでしょうか。そして、これから復活することができるのかということについて考えてみたいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

中国不調で赤字寸前

資生堂の第3四半期の業績が発表され、不振が続く中国事業と免税品販売などのトラベルリテール事業の先行きが不透明だとして220億円の増益予想だったところを60億円まで引き下げたということです。

資生堂<4911> 週足(SBI証券提供)

資生堂<4911> 週足(SBI証券提供)

資生堂<4911> 業績(SBI証券提供)

資生堂<4911> 業績(SBI証券提供)

2016~2019年は好調で、利益が倍以上に伸びていましたが、2020年のコロナで大きく落ち込み、その後復活しつつあったのですがそこからまた落ちてしまい赤字寸前にまでなっています。

もちろんコロナ禍という環境は厳しかったわけですが、その時以上に今の中国の状況は厳しいです。

なぜ資生堂は中国の影響を大きく受けてしまうのでしょうか。

 

まずは2016~2019年の絶好調だった時のことを考えてみましょう。

この時期に何があったかというと、中国の経済状況が非常に良くて経済成長率もものすごく高く、日本で言うところのバブル期のような状況でした。
不動産価格の高騰で中国の人々が金銭的に豊かになり、消費が活性化しました。
そんな中で、中国で高級ブランドとして受け入れられていた資生堂の商品が多く売れました。
中国国内で売れるのはもちろんですし、インバウンドや免税店の売上(トラベルリテール)も激増しました。

その後コロナがあり、インバウンドなどが無くなり、外出もしなくなったということで、必然的に資生堂は厳しくなりました。
しかし、コロナで厳しかったのは資生堂だけではなかったので、特に注目されることはありませんでした。

コロナが明けてふたを開けてみると、中国での売上が厳しくなってきました。

 

中国は今一転して景気が悪くなってしまっています。
かつて不動産で潤ってきたところからの反動で、不動産価格が下がり、人々は財布の紐を締めなければならなくなりました。

また、これまで民間企業が活性化することで経済成長を遂げてきたのですが、習近平氏は民間企業に対して縛りを強くしていて、資本主義とは一線を画す動きをとっています。

中国の景気が悪くなり、高級品とされる資生堂の商品は売れなくなってしまいました。

 

地元企業も成長してきて、資生堂を買わなくてもより安い商品が地元企業や韓国コスメであるということで、消費者がそちらに流れていってしまいました。

 

資生堂が注目されがちですが、ポーラ・オルビスやコーセーなど他の化粧品メーカーも同様の状況で、資生堂が特段悪いということではないのですが、純粋に中国の景気が悪いということは外部環境としてあります。

ただし、その中でも資生堂の中国への偏重やそこからの下落は目立つことも確かです。

 

資生堂は1981年頃という早い段階で中国に進出していました。
当時の中国はまだ貧しく、中国に進出して上手くいくとは思われていなかったのですが、それでも進出し、高級ブランドとしての位置づけを確定させてきました。
だからこそ中国経済が潤ってきた2016年頃に大きく飛躍することとなりました。
これは資生堂にとって大成功だったと言えます。

しかし、そこに胡坐をかいてしまった部分もあったのではないかと思います。

 

そこに拍車をかけたのが、ちょうど中国が花開いた時に就任した、今も会長である”プロ経営者”の魚谷さんです。
プロ経営者としては、自分の任期中に何か実績をあげたいという気持ちがあったと思われ、調子の良い中国に力を入れることでもっと業績を伸ばすことができて、日本初のグローバルビューティーカンパニーになれるということで、一気にそちらに注力しました。

 

ところが、中国の景気がそれほど長続きせず、肩入れしすぎた反動をくらっているところです。

プロ経営者が自分の功績を残すために目先の業績を上げようとして企業の長期的な価値を毀損してしまうことはよくあります。(日本マクドナルドやLIXILなど)

一方で、魚谷会長のやり方が全て間違っていたというわけでもなく、資生堂は日本中心でやっていたら厳しかったことには変わりないと思います。
2007~2015年あたりの業績は基本的に右肩下がりとなっていて、起爆剤として必要だった部分もあります。

Next: 高級路線は失敗か。資生堂の本当の「強み」とは…

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