資生堂の沿革と手に入れた「強み」
ただ、ビジネスポートフォリオ的な考えで言うと、日本が厳しいから捨ててしまうというのも違うのではないかと思います。
なぜなら、資生堂の本当の強みは日本の中にあるのではないかと感じるからです。
資生堂は元々薬局から始まりました。
「新しく深みのある価値を発見し、美しい生活文化を創造する」という理念のもと、医薬的な観点から化粧品を開発し販売してきました。
特にハマったのが高度経済成長期です。
高度経済成長期というと、みんなが中流になって百貨店に押し寄せるような時代です。
その百貨店で、いわゆる「美容部員」の力によって売上を伸ばしました。
また、CMに有名な女優などを起用してイメージアップを図るマーケティング戦略が功を奏しやすい時代でもありました。
元々商品の質は良くて、イメージを高めて、実際に来店したお客さんには1人1人アドバイスしながらおすすめしていくことで、多くの人が「資生堂の商品は良い」という状況(ブランドロイヤリティ)を作り上げてこれました。
中国でも同じように、まだ経済が発展していない時代から百貨店に入ったりして、それが花開いたところでもありました。
高級路線は失敗か
ただここに来て上手くいっていない部分が見受けられます。
第一点として、高級路線化があります。
私も全てを把握しているわけではありませんが、パッケージを豪華にするなど、欧米のハイブランドをまねたような動きが目立っているように感じます。
高級ブランドとなることができれば利益率を上げられるということでそちらに舵を切ったのかもしれません。
逆にシャンプーの「TSUBAKI」など、裾野の広い部分を疎かにしているように感じられます。
その結果、特に顧客の裾野が広い部分(若い層)で資生堂の商品を使っている人が少なくなっているのではないかと思います。
SNS広告などに載っている韓国コスメやプチプラのブランドを使っているのではないでしょうか。
SNSを見ていても資生堂の商品が出てくることはほとんどなく、SNSマーケティングの面ではかなり後れを取っていると思われます。
美容にとことんお金をかける人々は美容整形(またはそれに近しいこと)まで行うようになっていますし、かといって欧米のブランドのような高級ブランドに入っているかというとそうでもなく、どっちつかずの状況になってしまっているように感じます。
百貨店でも、美容部員がしきりにおすすめすることは少なくなっていて、資生堂と消費者の接点がどんどん失われていっている部分があるのではないかと思います。