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株価ピークから半減「浜松ホトニクス」今が買い?減益の要因は?長期投資家が注視すべき成長性とリスク=栫井駿介

何を作っている?

栫井:そもそも浜松ホトニクスはどんな製品を作ってどんな市場を相手にしているんでしたっけ?

元村:製品としては医用機器が主になります。X線検査をする時のX線を検出する機械や、歯科用のCT検査に使われるX線のフラットパネルセンサなど、様々な最先端の医用機器に浜松ホトニクスの製品が組み込まれています。もう一つが産業機器向けです。微弱な光を検知することが得意なので、例えば自動車業界では今EV車に需要が増えていて、リチウムイオンバッテリーなどがちゃんと機能しているかということを中身を開けなくても検査できる装置(非破壊検査装置)を作っていたり、この技術を半導体デバイスでも使えるように応用しています。こういったところに浜松ホトニクスの技術は活用され続けています。

栫井:光の技術に関しては右に出るものはいないということですね。そんな中で大きなお金をかけてM&Aや研究開発をしているということは、その先には大きなビジネスがあると考えて良いのでしょうか。

元村:私はそう思いますね。例えば医用機器に関しては、これから世界中で高齢化が進んで最先端の医療技術が発展していくというのは肌感覚としても感じますし、これまでの技術では検知できなかったものが、技術を磨いていくことで、細胞レベルで不具合が検知できるようになるとすれば待ち望まれていることだと思います。産業界でも、より高性能なバッテリーで地球環境にやさしいものを作っていこうという需要は高いと思いますし、半導体の高性能化も進んでいくとなった時に、これまで以上に非破壊検査装置の技術が求められてくると思います。

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出典:浜松ホトニクス 決算説明資料

前期の実績の売上高では、医用・バイオ機器が649億円で全体の35%程度、産業用機器も同じくらいとなっていますが、2027年には比率的には大きく変わらないですがこの2つの分野を年率10%くらいのペースで伸ばしていくという計画を立てています。

栫井:今も大きい部分が高度化することでさらに伸びていくと考えられるわけですね。

元村:ただ、この伸び率は途中で大きく変わる可能性もあって、医用機器も産業機器もやはり景気動向に大きく左右されるので、市場環境が不安定な状況が続くと成長が鈍化するかもしれませんし、逆もあり得ます。あとは浜松ホトニクスは新しい技術をどんどん開発しているので、例えば量子コンピューティング向けの光技術も開発していて、そういったものが実用化されて需要が爆増すると、このあたりの伸び率も大きく上がる要素も兼ね備えています。

「研究開発」という強み

栫井:私の印象としては、浜松ホトニクスは研究開発の部分では頭1つ2つ抜けていて、技術に関しては申し分ないと思いますが、逆に研究開発に力を入れすぎてビジネスが二の次になっていると感じるのですがいかがですか?

元村:正直私も同じような印象を少し持っています。株主の方をあまり見ていなくてわが道を行く会社だと思います。外部環境に左右されやすくて、なおかつ研究開発型の会社なので、景気が悪いことと先行投資が重なると業績は厳しくなりますね。将来を見据えていることは良いと思いますが、ボラティリティは大きくなってしまいますね。

栫井:逆に言うなら、ここまで研究開発に力を入れてきたからこそ今の浜松ホトニクスがあるということですね。その技術が金になるかどうかというところが大きいとは思いますが、会社の性格としてやっていることは間違いではないのかなということですかね。

元村:そうですね、間違っていないと思いますし、持っていない技術を買収によって補填して、可能性を広げていくというのも夢のある話だと思います。ただ、実用化して収益をあげるまでにどのくらいかかるかというところには不透明感があります。

栫井:投資家としてはある程度の設備投資の計画や売上の見通しが立っていたら嬉しいのになと思いますね。

元村:そうですね。決算説明資料でも、今後これだけの費用がかかりますよというところだけ見せつけられると驚いてしまいますね。

栫井:売上がよほど大きく伸びない限り、増える費用が重荷になって利益はもう3年くらい増えようがないという見方もできますね。

元村:今後業績を伸ばしていくということを示してはいるのですが、いかんせんこれまで下方修正・上方修正が繰り返されてきたので、計画通りにはいかない事業を展開しているんだなと感じられるところで、ギャンブル要素がやや強い印象を持っています。

 

栫井:この先2~3年の業績の伸びは不透明で株が買われにくいとなると、長期投資家としてはだからこそ今がチャンスなのではないかとも思いますね。

元村:その通りで、2~3年の短いスパンで考えると、業績の下振れはまだあるのではないかとも思います。一方で浜松ホトニクスが目指す方向性は間違っていないですし、これから光技術が様々なものに活用されていくことも間違いないと思います。その中で浜松ホトニクスがいないということは考えにくいので、5年10年というスパンで考えた時に今行っている研究開発がいつかは必ず必要とされるのではないかと感じています。

栫井:長期投資家としては、多くの人が買えない時に仕込んでおきたいですよね。

元村:そういうスタンスで、下がったタイミングで着々と買い増ししていくというのは長期投資においては良い打ち手かなと思いますね。

 

栫井:浜松ホトニクスの予測を立てにくいのは、最終製品を作っていないというところがありますね。常に機械のパーツを作っているので、どうしても需要を予測したり、自ら市場を開拓していく会社にはならないですよね。そこが難しいところですが逆に爆発力も大きいですね。その光の技術を使おうとしたら浜松ホトニクスにお願いするしかないということですもんね。

元村:もちろん競合している商品もありますが、浜松ホトニクスが一番だと業界では言われていますね。

栫井:これだけ費用をかけて研究開発を続けてきたからこそそこにいわゆる”経済の堀”が形成されて他の企業には真似されないということになって、そういう意味ではやはり長期投資向けの企業だと思います。確度を持った話は難しいですが、業界が伸びていく、高度化するという流れは間違いなくあるわけですね。

元村:個人的な観点では、技術がいつどういう形で求められるかは分かりませんが、今先行投資を繰り広げて、生産キャパシティも増強し、技術も今以上のものができて、それを世の中が求め始めた時の業績の回復スピードは上がってくると思います。今は費用がかかっていますが、それが抑えられてきた時に業績が回復するという、今と逆のパターンが発生すると考えるとわくわくしますね。

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