経営統合によるメリットは?
今回経営統合で発生するシナジーとして記者会見時に資料で発表されたのは、以下の7つである。
1. 車両プラットフォームの共通化によるスケールメリットの獲得
2. 研究開発機能の統合による開発力向上とコストシナジーの実現
3. 生産体制・拠点の最適化
4. 購買機能の統合によるサプライチェーン全体での競争力強化
5. 業務効率化によるコストシナジーの実現
6. 販売金融機能の統合に伴うスケールメリットの獲得
7. 知能化・電動化に向けた人財基盤の確立
見ていただいてわかるとおり、スケールメリットやコスト削減が主である。
スケールメリットやコスト削減以外のシナジーがなければ失敗する
M&Aではスケールメリットやコスト削減というのは一番わかりやすい統合効果であるが、スケールメリットしかメリットがないのであれば、M&Aは一般論としては失敗する可能性が高い。
この場合の失敗とは、単独のまま経営した場合にホンダが1、日産が1として、経営統合で1+1が2以上になればM&Aは成功だったということになるが、2以下になれば失敗ということになる。
そもそもM&Aは失敗する可能性がけっこう高く、1+1が2以下になる可能性自体が高いのだが、今回のホンダと日産の統合は2以下になる可能性がかなり高いと考えている(三菱自動車が合流した場合は1+1+1が3以下になる可能性が高い)。
企業の統合には決算書などに表れない企業カルチャーなどの部分があり、そのような部分はM&Aではかなり大きな影響を及ぼす要素となる。
企業カルチャーが合わないなどの要素はM&Aでマイナスに作用する要素となるのだが、統合によるメリットがスケールメリットだけだと、そのようなマイナス要素が顕在化した場合、M&Aの効果がマイナス(1+1が2以下になる)になる可能性が高い。しかもリストラなどが伴えば、そのようなマイナス面の顕在化の可能性はより高くなるだろう。
個人的にはホンダと日産の企業カルチャーはかなり乖離があると感じる。
ホンダもかつてほどの先進性はなくなっており、近年では悪い意味での官僚的体質も見られるようになっているとも言われるが、日産はその比ではないだろう(そのような日産の官僚的体質が今の経営危機をまねているわけだ)。