ホンダと日産が経営統合に向けた協議を本格化。2026年には世界第3位の自動車グループが誕生する可能性が浮上した。その背景には、電動化時代への対応、スケールメリットの追求、さらには台湾の鴻海精密工業の買収動向があった。しかしながら、ホンダ・日産の経営統合は失敗する可能性が高いだろう。(『 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」 』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2024年12月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
ホンダ・日産が経営統合へ
12月23日、ホンダと日産は経営統合に向けて本格的な協議に入ったと発表した。2026年8月に持ち株会社を設立し、ホンダと日産がそれぞれ傘下に入る。
三菱自動車も2025年1月末をめどに参画するかどうかを決断する。
3社の経営統合が実現すれば、販売台数735万台(2023年ベース)となり世界第3位の自動車グループが誕生する。
きっかけはホンハイによる買収の動き
ホンダと日産は2024年3月15日に自動車の電動化・知能化時代に向けた戦略的パートナーシップの検討を開始すると発表しており、資本提携に至る可能性も噂されていた。
その後、日産が2024年4~9月期(中間決算)で、前年対比90%減の減益、全従業員の7%に当たる9,000人の人員削減を発表したことで、日産の動きがにわかに注目されていた。
それでもホンダと日産の経営統合がすぐに動き出したわけではない。
動きが急に早くなったのは、台湾企業の鴻海精密工業(ホンハイ)による日産買収の動きが表面化してからである。
ホンハイはEMSと呼ばれる、電子機器の受託製造を行う業態の世界最大手企業であり、一般的にはアップルのiPhoneの組み立て業者として広く知られており、日本ではシャープを買収した実績もある。
近年では電気自動車(EV)に事業領域を拡げようとしており、自社製EVの製造・販売まで視野に入れているようだ。
日産は今後EVビジネスを拡大させたいと考えているホンハイにとって魅力的な買収対象であったわけである。
ちなみに時価総額を見てもホンハイが約12兆円に対して日産は2兆円弱と圧倒的な差があり、ホンハイは資金力も潤沢であるため、日産を買収することは資金面では容易だ。
ホンハイの動きに危機感を持った日産はホンダとの経営統合を急いだということだろう(おそらくその裏には経産省などの官庁の動きもあったのではないかと推察している)。