中国を「支援」「協力」「警戒」「敵対」のうちどういう対象だと考えるかを尋ねた質問に対し、次のような回答であった。『朝鮮日報』(3月13日付)が報じた。
中国に対して、20代の72%、30代の68%が「警戒対象」または「敵対対象」と否定的に答えた。一方、40代(56%)、50代(49%)、60代(45%)、70代以上(51%)は、「警戒」「敵対」がほぼ半分程度に減っている。20代・30代は中国への警戒心が70%前後と高いが、40代以上の世代になるとその半分は中国へ「支援」「協力」するという世論分布になっている。これは、共に民主党が「親中国」となる必然的な世論基盤を持っている結果であろう。
韓国は、朝鮮戦争で北朝鮮軍と中国義勇軍に侵略されている。それにもかかわらず、韓国の40代以上の世代が中国を「許して」おり、中国を「支援」「協力」対象にする意見が半分も存在する。これは、米国にとっては侮りがたい勢力の存在と認めるほかあるまい。左派が、次期政権を握れば確実に「中国接近」場面が始まるであろう。
これは、トランプ政権が描く米国を基軸とする「世界戦略構図」から韓国が外れることを意味する。米国は、次期韓国政権が成立する前から手を打とうとしている。これによって、間接的に左派政権成立を拒みたいという意思表示とみるべきであろう。
疑われる司法の中立性
今回の尹大統領の逮捕・起訴の裏に、韓国司法が「左派」と気脈を通じていると危惧させる動きがあった。
尹氏への逮捕状・勾留状を発布したソウル西部地裁の動きである。本来であれば、ソウル中央地裁が管轄権を持っている。検察は当初、ソウル中央地裁へ尹氏の逮捕状・勾留状発布を請求したが拒否され、西部地裁へ再申請して認められたのである。こういう裏事情が朝鮮日報のスクープで明らかにされている。これは、韓国左派に通じている司法の存在を認めるような事態であり、極めて由々しいことである。ソウル中央地裁は、尹氏の弁護団による勾留取り消し請求を認めた。
勾留取り消し決定によって、尹氏へ逮捕状・勾留状を発布したソウル西部地裁の立場が、極めて微妙なものになっている。司法は、政治から独立した存在でなければ、国民の信頼を得られないのだ。韓国司法の信頼度が4割と低いのは、司法が政治性を持っているからであろう。この裏には、左派を貫く思想基盤として北朝鮮金日成による朝鮮民族の「主体(チュチェ)思想」(自主、自立、自衛)が共感されているという現実がある。
韓国では、共産主義が禁止されている。この結果、左派へ「隠れマルクス主義者」が入り込んでいることは否めない事実だ。本来ならば、リベラリズムの進歩主義が、韓国ではマルクス主義色を帯びる戦闘的「左派」になっている。この点の識別が重要である。韓国左派への批判的な言説は「右翼」とみられがちだが、それは大きな誤解である。韓国左派が、先進国の左派と全く異なる行動を取るのは、マルクス主義が混じっている結果である。
韓国の戦闘的「左派」によって、現在の国会運営はどうなっているかをみれば、一目瞭然である。「共に民主党」は、尹政権ですでに29回もの弾劾案を上程して政策遂行を妨害している。共に民主党は、国会で絶対多数を占めているから、大統領弾劾以外は「多数決」で弾劾案を成立させられるのだ。現在は、沈雨廷(シム・ウジョン)検察総長(検事総長に相当)に対して弾劾をちらつかせながら圧力を加えている。理由は、尹大統領釈放へ異議申し立てをしなかったというものである。
この弾劾案が提出されれば、尹政権発足後30回目の弾劾になる。1948年の韓国政府成立以来、提出された弾劾案(21件)よりも、ここ3年間の弾劾案件数が多いという驚くべき事態が起っている。この一事でも、韓国政治が異常な状態へ突入しているかを窺わせている。米国が、韓国を「センシティブ国」へ指定するのも頷けるのである。