<イーロン・マスク氏の影響>
アメリカ経済が悪化している原因は、関税政策に関連するものだけではありません。
トランプ政権のもう一つの重要な要素として、イーロン・マスク氏の存在があります。
現在イーロン・マスク氏は、アメリカに政府効率化のための組織を設立し、政府支出削減を進めています。
Twitter(現X)買収時の対応からも分かるように、イーロン・マスク氏は「働かない人」を好んでいません。
トランプ大統領を支持したことで政府内に影響力を持ち、非効率と判断した政府職員を大量に解雇しはじめています。
一般企業のリストラであれば経済全体への影響は小さいですが、政府機関による大規模な人員削減は多くの失業者を生み出します。
ロイターの報道によると、「2月の米国人員削減は245%増加し、連邦政府の職員雇用が影響している」とのことで、公務員の大量解雇が進行中です。

出典:ロイター「米人員削減、2月は245%増 連邦政府職員の解雇が影響」
クレジットカード支出のデータでも、政府機関が集中するワシントンDCだけは2月も引き続きマイナスでした。

やはり、政府関係者が多く働くワシントンでは失業者が増えていてお金を使うことに消極的になっていることがこのグラフからも見て取れます。
ちなみに、日本では失業率が低いためあまり注目されませんがアメリカ経済にとって雇用問題は重要です。
なぜなら、失業者の急増による消費減少が原因で景気悪化に陥りやすいからです。
アメリカはスタグフレーションが懸念されている
現在、アメリカではスタグフレーションが心配されています。
スタグフレーションとは、物価上昇と景気悪化が同時に起こる状態のことを指します。
本来景気が悪化しているなら、金融政策が効果を発揮する局面です。
コロナ時のように金利を引き下げれば、景気が回復すると期待されていました。
しかし、現在の状況で関税政策が導入されるとインフレ収束が遠のきます。
さらに、消費者はすでにインフレによる物価上昇を実感し支出を抑えています。
このことから、現在の米国経済ではスタグフレーションの問題が懸念されている状況です。
ウォールストリートジャーナルの記事によると、消費者信頼感指数(消費者の景気に対する見方を示す指標)が2022年以来の低水準に落ち込んでいるようです。

出典:The Wall Street Journal「リセッションの予兆、見るべき指標は」
結果として、1月のクレジットカード・デビットカード支出が前月比で大幅に減少したと報じられています。
また、クレジットカードの支払い延滞率も上昇しており、経済的困難から支払いが遅れる人が増えています。