重なった不幸な条件
この事故は不幸な条件が重なったとしかいいようがありません。まず、事故現場では道路工事が行われていて、車線規制が行われていました。

事故車は右から左へ走行していた。コンクリート製の中央分離帯(緑)を一部開け、反対車線に誘導して迂回をする誘導路を設定していた。
中国は右側通行ですので、左方向へ進む車は上段の右側車線を進みます。事故を起こした車は右から左へ走ってきて、この工事区間に差し掛かりました。
コーンの誘導により、いったん反対車線に入り、2車線を上りと下りで分け合って走行して通過します。
緑色の中央分離帯はコンクリート製です。この一部を撤去して、誘導路を設定しています。
問題の車は、右から走ってきて、この工事区間に差しかかりました。そして、反対車線に移る時にハンドル操作を誤って、中央分離帯に激突しました。即死または意識を失ったと見られており、衝撃でバッテリーが破損し、炎上をすることになりました。周囲にも車は多くなく、他の運転手が気づいて救助に向かった時にはすでに火災が発生をしていて、手に負える状況ではなかったそうです。

事故車は右から左へ走行している。反対車線に移る誘導路を走行中、ハンドル操作を誤り、コンクリート製の中央分離帯に衝突した。
事故の経緯は次のようなものです。

小米がEDRのデータを整理して公開した事故の経緯。2秒前に運転介入が行われ、手動運転に切り替わっている。
事故の17分10秒前に運転者はNOA(Navigation on Autopilot=自動運転)をオンにしました。高速NOAは、各社ほぼ100%の自動運転ができるため、多くの人がハンドルから手を離し、ペダルから足を離します。ただし、あくまでもL2+自動運転であり、運転主体は人間という建て付けですので、スマホを見たり、映画を見たりすることはできず、環境に目を配り、安全確認をしなければなりません。問題があると感じた時は、NOAが警告を出さなくても、人間から運転介入をするというのが原則です。ハンドルやペダルを操作することで、NOAはオフになり、人間に制御が移ります。
とは言うものの、これは建前であり、多くの人がスマホを見てしまいますし、中には寝てしまう人もいます。女子大学生3人のドライブでしたから、顔を後ろに向けておしゃべりをしたり、お菓子を食べていたのではないかと想像するのは不自然なことではありません。
16分10秒前。NOAが軽度の警告を出します。これは地図のリアルタイムデータから前方で車線規制が行われているものを告げるものです。「この先車線規制があります」「この先渋滞が発生しています」という日本のカーナビでもおなじみの警告です。ただし、多くの人が気にしないのも現実です。
7分39秒前。NOAがハンドルを握るように警告を出します。NOA中は、ハンドルから手を離してもかまいませんが、3分から5分に1回ぐらい、ハンドルを握らないと警告が出るようになっています。ハンドルを1回握り込むことで、この警告はしばらく出なくなります。居眠り防止のためです。警告を出してもハンドルを握ってくれない場合は、さらに警告を出して、路肩に寄せて安全停止をすることになります。
この運転者は警告に従ってハンドルを握ったようです。以後、この警告は出ていません。
3秒前。工事区域に差しかかり、前方の車線がふさがっていることをNOAが認識し、強い警告を出し、減速を始めました。
2秒前。運転者が状況を把握したのでしょう。ハンドル操作が行われ、NOAが自動的に解除され、人間の運転に制御が移ります。しかし、ブレーキペダルの踏み方は31%と軽く、急ブレーキではありません。減速をして、誘導路に入るつもりだったと思われます。
しかし、ハンドル角が大きすぎます。あわてて切りすぎたのではないかと想像できます。この時に、左側のコーンに接触したという情報もあります。コーンは吹き飛ぶだけで、車に大きな衝撃はありませんが、運転者が慌てることは間違いありません。
1秒前。ブレーキペダルの踏み込みが強くなり、ハンドルがわずかに逆の右に切られます。おそらく、左に切りすぎて、左側の誘導コーンに接触する/したと思ったのでしょう。しかし、じゅうぶんに左車線に移っていなかったために、コンクリート製の中央分離帯に接触してしまいます。事故後の写真を見ると、右前のタイヤが吹き飛んでいて、右前方の損壊が激しくなっています。左の誘導コーンに接触することを恐れて、右に戻しすぎたようです。
1秒後。車体が衝撃を受けたことにより、システムが自動発報。シャオミのセンターは異変を察知します。
12秒後。センターは車両状況データから事故発生を確認。警察と救急に位置情報をつけて通報をします。
39秒後。センターは登録された車両オーナーの携帯電話に連絡をします。しかし、オーナーは無事で車に乗っていませんでした。オーナー以外の人に貸したことが判明しました。オーナーと運転者の関係については明らかになっていません。親子であるという報道もあります。
2分48秒後。救急車が出動をします。しかし、高速道路であることから、到着までは30分以上かかりました。その時には、発火をしていて、救出もできず、乗員は絶望状態でした。
この事故について、自動運転、運転者、道路管理者に対するさまざまな疑問が起きています。
今回は、この事故を取り上げ、自動運転を社会実装させるために乗り越えなければならないことは何なのかを考えます。