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「銀行株」トランプ関税で急落…今こそ買いか?下落要因と長期投資家が注視すべきリスク=栫井駿介

近年、銀行株が大きく上昇していることに注目が集まっています。もしかしたら、あなたのポートフォリオにも銀行株が含まれているかもしれませんし、これから投資を検討している方もいるかもしれません。この記事では、銀行株の株価が上昇してきた背景、そして今後に潜むリスクについて解説します。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

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なぜいま銀行株が注目されている?過去数年の株価推移

過去数年の株価推移を見てみましょう。振り返ってみると、銀行株は長らく割安な銘柄として認識されてきました。しかし、2023年頃からその状況は一変し、株価は大きく上昇しています。2023年の初め頃と比較すると、株価が約2倍になった銘柄も少なくありません。

この株価上昇の背景には、主に以下の2つの要因が考えられます。

<割安株の見直し>

東京証券取引所からのPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する改善要請を受け、銀行各社も様々な施策を打ち出しました。これに対し、海外投資家を中心に日本の割安株への期待感が高まり、銀行株への買いが集まったのです。

<金利の上昇>

日本でも、特に植田総裁が就任して以降、徐々に金利が引き上げられてきました。銀行のビジネスモデルは、企業などへの貸し出しによって収益を得るというものです。金利が上昇すれば、貸出金利も上昇するため、単純には収益増に繋がると考えられます。 実際に、10年国債利回りも株価の上昇とともに上昇しています。

日本国債10年 日足(SBI証券提供)

日本国債10年 日足(SBI証券提供)

知っておきたい銀行のビジネスモデル:金利上昇は永遠の追い風ではない

金利上昇が銀行にとってプラスに働くことも確かですが、注意しておきたい点もあります。

まず、金利が上がれば単純に収益が上がるとは限りません。銀行は預金としてお金を調達し、それを貸し出すことで利益を得ています。預金には預金者に対して金利を支払う必要があります。貸し出し金利が上がる一方で預金金利も上がるため、利益の源泉となる「利ざや」は増えないということになります。

これまでは金利が低すぎたため、貸し出し金利が下がる中で預金金利はゼロ以下に下げられないという状況が続いており、利ザヤは縮小していました。金利の上昇局面では、貸出し金利が大きく上がり、預金金利の上昇は緩やかなため、一時的に利ザヤが広がります。しかし、金利が上がり続ければいつまでも利益が拡大するわけではなく、預金金利もいずれ上がり、利益の拡大も止まってしまいます。

足元の株価下落:トランプ関税の影響と投資家の懸念

現時点でもPBRは1倍程度、PERは11倍程度と割安感があり、利回りも3%以上と魅力的に見えるかもしれません。

しかし、これまで株価が上昇してきたからといって、まだ割安だから買えるとは限りません。足元の状況をもう一度考える必要があります。

特に、トランプショックと言われている株価の急落があります。割安であればそんなに下がらないはずだという見方もありますが、利益確定売りだけでなく、一部の投資家はこれから起こりうる状況を懸念して売っている可能性も否定できません。

なぜなら、日本の銀行に限らず、米国の銀行も関税ショックで大きく株価を下げているからです。バンク・オブ・アメリカの株価も同様に下落しています。

関税の影響は直接的には銀行には及ばないはずですが、今回の関税の余波として、現在の銀行は大きなリスクを抱えることになったと言えます。

Next: 銀行株は今後どうなる?中長期的なリスクをまとめると…

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