アメリカ以外の地域は?欧州での新たな成長
米国での圧倒的な成功に続き、近年注目されているのが欧州市場の成長です。
実は、欧州での展開も早く、1973年頃には西ドイツで鉄板焼きレストランを通じて醤油の普及活動を行っていました。これは、米国での店頭デモンストレーションと同様の手法で、目の前でキッコーマンの醤油を使った料理を提供することで、その味を広めていったのです。
北米ほど早い段階からの成長は見られませんでしたが、近年、欧州では健康志向の高まりや、それに伴う日本食ブームが起きており、醤油の消費量が増加傾向にあります。日本のアニメブームなども、日本食への関心を高める一因になったと考えられます。
世界には様々な食文化がありますが、その中でも日本食は徐々に認知度を高めており、健康的なイメージも手伝って、欧州での成長に繋がっているのでしょう。
競合は?圧倒的なシェアと代替調味料の存在
米国市場において、キッコーマンの醤油は圧倒的なシェアを誇っており、他の日本の醤油メーカーも進出していますが、その差は大きいようです。
むしろ、実質的な競合となるのは醤油以外の調味料だと考えられます。例えば、ソース、ドレッシング、トマトペーストといったものが、料理によっては醤油の代わりに使われることがあります。クラフトハインツやマコーミックといった食品メーカーが、これらの市場で競合となるでしょう。
しかし、「醤油といえばキッコーマン」というブランドイメージは非常に強く、消費者が一度特定のメーカーの醤油を美味しいと認識すると、なかなか他の銘柄に乗り換えにくいという業界の特徴もあるようです。私自身も、特に深く考えずにいつも同じ銘柄の醤油を買っているように思います。いわゆるスイッチングコストが高いという状況です。
アメリカ市場の持続的な成長と新たな成長の芽
改めて米国市場の成長を見てみると、2014年以降も右肩上がりで売上を伸ばしていることが分かります。また、欧州やオーストラリアといった地域でも同様の成長が見られます。
特に米国では、今後も人口増加が見込まれ、移民の中でアジア系の比率が最も高いというデータもあるようです。これは、キッコーマンにとってさらなる追い風となる可能性があります。

一方で、日本市場は人口減少と少子高齢化が進んでおり、醤油の市場規模は縮小傾向にあります。豆乳市場もかつてはブームがありましたが、近年は頭打ちとなっており、国内市場での成長は厳しい状況と言えるでしょう。
しかし、キッコーマンは「生醤油」といった新しい商品を開発し、停滞する国内市場を活性化しようとしています。国内の醤油メーカーは1,000社以上ありますが、市場の縮小とともに廃業するメーカーも多く、大手への集約化が進んでいます。その中で、国内シェア約34%を誇るキッコーマンは、依然として強い存在感を示しています。