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なぜ「DeNA」株価下落?ポケポケ依存から脱却できるか?長期投資家が注視すべきリスクと成長戦略=佐々木悠

今後の新作開発と戦略:ソフトローンチとIP活用

正直なところ、こうしたスマホゲームは一時的にガッと伸びた後、右肩下がりになる傾向はどうしても避けられないと思います。そうなると、ヒット作を次々に生み出すしかありません。DeNAはそれに対して何か対策を講じているのでしょうか。

新作タイトルに関する言及としては、2026年3月期以降、従来の開発手法とは異なる新たなパイプラインを中心に開発を想定していると記載されています。従来型の開発による新規タイトルについては、現時点で案内はないとのことです。これは、まずはポケポケにしっかり注力していこう、というニュアンスもあるのかもしれません。基本的には、あまりお伝えできることはない、ということだと思います。

では、その「新たなパイプライン」とは何でしょうか。ゲーム事業の特徴として、先行投資が非常に大きいにも関わらず、ヒットするかどうか分かりづらいという点があります。これはDeNAだけでなく、任天堂のソフトなども同様です。特にスマホゲーム業界はヒット率が低い業界です。

その中で考えられる新たな戦略の一つが、「ソフトローンチ戦略」です。これは、未完成なままゲームをリリースし、ユーザーの反応を見てアップデートを繰り返しながら、長い時間をかけてユーザーと対話しながらゲームを作っていくという手法です。これにより、開発リスクを抑えながら新たなゲームを開発していく、という考え方です。

ヒット率が低いなら、とにかく試行回数(打数)を増やそう、早い段階で出してみよう、という考え方は理解できます。リスク回避の考え方としては一般的かもしれません。しかし、これができるのであれば他の会社も同じことをやるでしょう。中途半端なゲームが大量に出回ることになり、ユーザーが選ぶのが大変になるという側面も考えられます。打数が増えればヒットも出る可能性はありますが、個人的には、この手法だけでは、いわゆる企業の「経済の堀」(揺るぎない強み)にはなり得ないと思っています。

だとしたら、DeNAの強みを生かしたソフト開発をする必要があるのではないでしょうか。
例えば、今回ポケポケを出せたのは、DeNAという看板があったこと、そして任天堂と資本提携していること が大きかったはずです。任天堂のIPキャラクターを使ったゲームをバンバン出していく、というのが、ある意味一番確率が高い戦略なのではないかと考えています。

過去には、2015年や2016年頃にDeNAの株価がぐんと上がった時期がありますが、その時はまさに任天堂との資本提携発表があったのと同時に、「どうぶつの森」のアプリなどの開発を行っていた時期でした。これらはリリースもされています。大ヒットしたかというと少し微妙なところですが、そういった新しい期待がどんどん出てくるようになると、より良くなるのではと思います。

任天堂はスマホゲームを自ら本格的にやることはないでしょうから、DeNAは非常に良い立ち位置にいると思います。もっと任天堂のIPを活用できないのでしょうか。なんとか必死で説得してでもやる、といった意欲はあまり感じられないのが正直な印象です。

任天堂のIPをうまく活用していくことは、両社にとってWin-Winになる可能性があると思います。私としては、今の開発手法よりも、任天堂IPをうまく使える立場にあるという、本来のDeNAの強みをもっと生かすべきではないかと考えています。

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