投資家が注目すべき課題:割高なPERと海外事業のリスク
国内事業は盤石なトリドールHDですが、投資対象として考える際には、現在の株価水準と海外事業の状況に注意が必要です。
<驚愕のPER 79.8倍!割高感の評価>
トリドールHDの現在のPERは79.8倍です。
- 一般的な妥当水準
- 競合他社(外食大手)のPER
15倍から20倍程度。
ゼンショー37倍、スカイラーク48倍、吉野家47倍など、通常20~30倍に収まる傾向があります。
この80倍近いPERは相当に高い水準であり、市場が高い成長期待を織り込んでいることを示しています。
<海外事業の「多難な現状」:M&Aと低い利益率>
市場が期待する成長の柱は海外展開ですが、現在の海外事業の収益性は必ずしも高くありません。
- 海外事業の利益率
- M&Aによる売上増
昨年度の実績地で、売上は18%伸びていますが、利益率はわずか2.4%しかありません。
海外の売上増は、積極的に行われたM&Aによって牽引されています。買収対象には、丸亀製麺のうどんではない香港のアジアンフード(タムジャイ)や、イギリスのピザチェーンなども含まれています。
買収によって店舗数は国内に匹敵するほど伸びていますが、現時点では利益が出ていない状況です。実際、過去の利益が落ち込んでいる原因の一つとして、儲かっていない海外店舗の減損損失の計上が挙げられます。
<今後の懸念点>
会社は中期経営計画で、営業利益の1.6倍増(230億円)を目標に掲げていますが、これが達成されたとしてもPERは50倍程度に割り戻される水準であり、依然として高いです。
成長目標にはM&Aは織り込まれておらず、現在の計画では海外のM&Aに積極的ではない可能性も示唆されます。これは、買収した事業の運営が国内とは勝手が違い、難航していることが理由かもしれません。
世間で言われる「うどんの海外輸出で大儲け」という状況には、まだ至っていないという感触があります。
まとめ:国内の強さと海外の不確実性のバランス
トリドールホールディングスは、国内の丸亀製麺事業において、顧客を感動させる仕組みと、従業員インセンティブを活用し、グイグイと客単価と利益を伸ばしていく盤石な構造を作り上げています。直近の四半期決算も好調に推移しているようです。
しかし、その成長期待の大部分を担う海外事業は、M&Aによる拡大途上にあり、高い利益を出せる状況には至っていません。
現在のPER 80倍近い株価は、海外でも丸亀製麺と同じように高い利益を出せる状況を作ることができれば面白い水準ですが、現時点ではその道筋は明確に見えきれていないため、割高感があるという評価もできます。
最終的にこの会社への投資判断は、長期的に海外が成長できるかどうかにかかっていると言えるでしょう。
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『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2025年9月27日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。