最安値更新中のトルコリラ相場で、政治日程が新たな焦点に加わりそうです。2028年に予定される次期大統領選・総選挙を巡り、前倒し実施の観測が広がっているためです。エルドアン政権がさらに長期化する場合、リラにどのような影響を与えるでしょうか。
トルコの最大野党・共和人民党(CHP)のオゼル前党首は7月21日、新党を結成する考えを表明しました。裁判所が党首交代を命じたことを受けた決断で、党大会の有効性を巡る司法判断が野党の混乱に拍車を掛けています。それにより最大野党の分裂は避けられない見通しです。このまま野党勢力の結束が揺らげば、エルドアン政権にとって有利な政治環境が醸成される可能性があります。
次期大統領選・総選挙は2028年までに実施される予定ですが、以前から前倒し実施の観測がくすぶっています。背景にあるのは、エルドアン大統領の任期。現行憲法では大統領は原則2期10年までと定められており、現在の任期が最後となるためです。一方、議会が任期途中で早期選挙を決めた場合は再出馬できるとの規定があり、前倒し論が繰り返し取り沙汰されてきました。
エルドアン氏は2017年の憲法改正で議院内閣制から大統領制へ移行した際、2018年以降を「新制度での1期目」との独自解釈で現在の政権運営を続けてきました。今回も同様に、憲法改正や早期選挙を通じて続投への道筋を探るのではないかとの見方が波紋を広げています。野党の混乱が深まるなか、選挙が前倒しされる事態となれば、国際金融市場も無視できなくなります。
次期選挙で仮に野党勢力が再結集して政権交代を実現すれば、市場の見方は一変するとみられます。海外投資家は中央銀行の独立性回復やインフレ抑制を重視しており、金融・財政運営への信認が高まれば、海外資金の流入を通じてリラ買いが強まる展開となるでしょう。半面、新政権が経済改革を着実に進められるかは未知数で、政策運営への期待が失われれば、リラ高は一時的に終わる可能性もあります。
逆に、エルドアン政権続投なら、前回2023年と同様にリラ売りを強めるでしょう。金融政策への政治介入が改めて警戒されるためです。ただ、エルドアン氏が現在の引き締め路線を維持し、財政規律や市場重視の政策を続けるのであれば、政治の安定を評価した資金流入も期待できるかもしれません。その際には選挙後に従来型の政策へ戻るのか、現行の経済運営を保つのかが、リラの方向を決めることになります。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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