fbpx

セレンディップ Research Memo(4):新中期経営計画を策定、2029年3月期の売上高1,000億円を目指す

マネーボイス 必読の記事



■セレンディップ・ホールディングス<7318>の中期経営計画

1. 新中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ1000」
2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ500」では、モノづくり企業のM&Aを加速したことで、売上高を1期前倒しの2026年3月期に達成した。数値面にとどまらず、内部環境面における成果も大きい。モノづくり企業のM&A加速により増加した子会社に対し、PMIを通じた生産現場の効率化やDX・RX・AXの導入を推進し、三井屋工業東北工場を中心にスマートファクトリー化を進めた。また、ロールアップ型M&Aにより取得した企業のグループ内統合を進めたうえで、セレンディップ・オートモーティブを中心に各社の技術や機能を組み合わせたユニットサプライヤー化を推進し、売上成長や収益性・管理効率の向上を実現する体制を整えた。さらに、M&Aの進展に伴い、同社が成長領域と考えている海外事業の拠点拡充が進み、2026年3月期の海外売上高が2024年3月期の790倍となる111億円に急増するなど、事業承継のトータルソリューションカンパニーとしてのビジネスモデルが、外部にも分かりやすい形で具体化された。

今後の成長戦略として、M&Aのさらなる加速、PMIや企業統合の強化、スマートファクトリー化を継続するとともに、経営人材の確保・育成、新領域への拡張、ソリューションビジネスの展開なども実行し、ビジネスモデルを太くするフェーズとなった。このため同社は、新中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ1000」を策定し、2029年3月期に売上高1,000億円、調整後営業利益70億円、調整後EBITDA100億円、調整後ROE20.0%を目指すこととした※。売上高は、M&Aで390億円~400億円、オーガニック成長(海外戦略、新規顧客・クロスセル、新製品・新サービス)で100億円を上乗せし、調整後営業利益は、高付加価値領域のM&Aで30億円、オーガニック成長(PMI・生産性向上、新規顧客・クロスセル、海外戦略)で14億円を積み上げる計画である。これにより、2029年3月期にプライム市場への上場や海外展開を意識したIFRSの導入などを実現し、日本発のモノづくりプラットフォーマーとして長期目標の売上高3,000億円の達成に弾みをつける。

※ 調整後営業利益=営業利益+のれん償却費+M&A関連費用、調整後EBITDA=調整後営業利益+減価償却費。調整後ROEは調整後当期純利益(当期純利益+のれん償却費+M&A関連費用-負ののれん発生益)をベースに算定。

2. 成長戦略
成長戦略のなかで特に重要となるのが、M&A戦略とフィジカルAIの活用も含めたスマートファクトリー戦略、加速するM&Aを支える財務戦略である。

M&A戦略では、同社は自動化ニーズの高まりを捉えるとともに、事業規模の拡大に伴い収益が安定してきたことを背景に、独自の投資方針であるセレンディップ投資ポートフォリオ(SIP)を高成長・高収益領域への投資割合を高める方向へ転換した。これにより、新たな業界や海外など新領域、AIやDX・RXといった付加価値の高い領域など成長分野への投資を積極化する方針である。新領域では、自動車産業に隣接し、構造部材や加工技術の共通性からクロスセルが見込める建設機械セクターの日建産業をM&Aした。日建産業が関西に拠点を持つことから、営業エリアの拡大にもつながった。また、海外売上高の急増を受け、ASEAN、インド、北米を重点市場に、欧米や中国など日系以外の自動車メーカーとの取引も増やす方針である。特にタイを拠点とするクロスボーダーM&Aによって、アジアでの成長を促進する考えである。

スマートファクトリー戦略では、自動化により自社工場の生産性を高めるとともに、蓄積したノウハウを将来的に外販して新たな収益の柱を育成する計画である。モノづくりとソリューションを併せ持つことから自社内でPoCを展開できる強みがあり、ソリューションの際に現場の言語を使えるため、スマートファクトリー業界のなかでも優位な立場にあると見られる。加えて、見える化で集約したデータにAIを活用し、「事後対応」から「非停止・高効率で自律改善型の予測型生産」へと生産現場の進化を進める。このため今後、多くのロボットメーカーやIT企業と提携していく考えである。さらに、フィジカルAI※を自社工場に試験導入して、従来のアーム型ロボットや搬送ロボットではできない非定型業務の自動化や省人化を推進し、この分野で2029年3月期には売上高11億円を目指す。PoCから設計、導入、運用、保守・メンテナンスまで一気通貫した体制を強みに、その実現を目指す構えである。

※ センサーで認識しAIが判断した結果を、ロボットなどが物理的に実行するAIシステム。

財務戦略では、「レバレッジを活用したM&A→PMIによるEBITDA向上→成長投資による収益力強化→キャッシュ創出→ROE向上によるエクイティ価値拡大→資金調達力のさらなる向上」という成長スパイラルの構築を進める。このなかで重要となるのが規律あるレバレッジ戦略と最適資本構成である。レバレッジについてはNet Debt/EBITDA倍率の目途を3倍に設定し、最適資本構成については、営業キャッシュフローとグループ内資金、資本コスト2%〜3%の銀行借入・LBO、資本コスト5%〜6%のメザニン(返済順位劣位のデットとエクイティの中間的資金調達)の順で活用する。一方、資本コスト8%以上となるエクイティについては希薄化抑制の観点から優先度を低くしている。

この方針の下、新たな取り組みとして2026年6月に、資金調達プラットフォームとなる(株)ものづくり事業承継ホールディングス(以下、JMS)を設立した。JMSには国策金融機関やメガバンク、地方銀行、事業会社が共同出資し(配当を対価とする資金)、M&Aを実施する際にはLBOローンを活用することで買収資金の調達効率を高める仕組みとなっている。従来は案件ごとに資金調達を行っていたが、JMSによりあらかじめ投資枠を確保することで、株式の希薄化を抑制しながら機動的なM&A実行が可能となる。

投資可能額は現在100億円(約2社のM&Aに相当)から3年後には400億円(同7社〜8社)への拡大を計画しており、すでにJMS初の投資案件として日建産業への投資を実行しており、今後の投資拡大に向けた体制を整えている。JMS傘下の企業も100%連結対象となるため、JMSを活用したM&Aの積み上げは将来的な連結売上高1,000億円の実現にも寄与する。

■株主還元策

プライム市場への市場替えを見据え、配当や優待による還元も検討

同社は株主に対する利益還元を経営の重要課題の1つとして認識しており、企業ステージに応じた最適な株主還元を行う方針である。現在は成長投資を優先する段階にあるため、利益成長による株価上昇を通じた還元を基本とし、必要に応じて自己株式の取得も実施してきた。今後は、新中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ1000」の達成に向けた取り組みが進展し、目標達成の蓋然性が高まった段階で、配当を含む株主還元策の実施を検討する考えである。なお、自己株式の取得については、株価水準や資本効率を踏まえ、引き続き機動的かつ戦略的に実施する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)
いま読まれてます

記事提供:
元記事を読む

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー