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なぜ北朝鮮の金正恩第1書記は核開発と幹部粛清をやめられないのか?=高野孟

でも、核開発に狂奔しているではないか?

そうは言っても、金正恩は国際社会の非難を無視してますます核・ミサイル開発に猛進しているではないか。坂井は答える。

日本の報道では北朝鮮だけが行動をエスカレートさせているかのようですが、北朝鮮の視点から見れば、「米国の脅威を受けている」ということが大前提になっています。そのなかで、米韓が大規模軍事演習を始めたり、正恩氏を狙う「斬首作戦」がささやかれたりすることに北朝鮮は対応しているつもりであり、お互い様という面があります。

正恩氏は核とミサイル開発を進めるだけで国防はもういいと考えていると思います。彼らは他国からの攻撃を抑止するために核を持とうとしています。安心を手に入れた上で経済政策に力を注ぐつもりでしょう。そのような考え方を3年前――党中央委員会総会で核開発と経済建設を同時に進めるという「並進路線」として打ち出しました…。

政府部内にこのような国際標準の冷静な分析家がいる(いた?※板井は12年に退職)というのに、なぜ安倍の北朝鮮観はあれほど幼稚になってしまうのだろうか。他方、ダイヤーはこう言う。

北朝鮮は2万1,000門の大砲で韓国の北半分を狙うことが出来、また数千発の短距離ミサイルで韓国の南半分を撃つことが出来る。平壌の核兵器はそれとは違う目的のものであるに違いない。

北朝鮮にとっての戦略的問題は、同国は同盟国を持っていないのに対して、韓国は世界最強の核大国である米国という同盟国を持っていることである。その米国は、核の先制不使用を決して約束していない。平壌は、もし戦争になった場合に、米国が朝鮮半島で核を使用することを抑止するための何らかの手段を必要としている。

このことは、北朝鮮のやっていることを正当化するものではない。しかし、それを説明するものではある…。

2人が言うとおりで、北朝鮮は、かつての朝鮮戦争中にダグラス・マッカーサー司令官が原爆使用を主張してトルーマン大統領と対立し解任された歴史的事実を決して忘れていないし、その戦争が国際法的に見れば未だ終わっていないことをこの63年間片時も忘れることなく怯えながら過ごして来たのである。

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