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なぜ北朝鮮の金正恩第1書記は核開発と幹部粛清をやめられないのか?=高野孟

「先軍政治」は捨てた?

さらに、坂井が金正恩は「核とミサイルだけで国防はもういい」と考えているだろうと言っているのは、面白い1つのポイントである。「ニューズウィーク」日本語版コラムニストで釜山大学准教授のロバート・ケリーは5月24日号に「『先軍政治』を捨てた金正恩の賭け」を寄稿して、こう述べている。

94年に金日成が死去し、正日が権力の座を継いだ頃、東欧の共産圏が崩壊し、次は北朝鮮の番だとささやかれていた。そこで正日は、国家の崩壊や軍のクーデターを防ぐために共産主義を放棄し、軍最優先の「先軍政治」を国の指針にし、軍を統治に参加させた。

軍部は次第に金食い虫になり、金正日時代には人民軍がGDPの30~40%を食い尽くしていたとの試算もある。……金一族も軍をコントロールできなくなってきた。

そして5年前、金正恩が権力を継承した当時の北朝鮮は、もっと悲惨で、貧困、国際的な孤立、政治の腐敗、経済の停滞、誤った国家運営、飢餓、外国特に中国への依存。……「先軍政治」の代償はあまりに大きく、持続不能なのは明らかだった。……北朝鮮が破綻国家にならず、中国の属国にもならないためには、軍を経済や政治の領域から追い出す必要があった。だから正恩は国家の資源を軍から取り戻し、国家経済に投入して十分な成長を確保しようとした。

核と経済の両立こそが「並進政策」だ。(その意味は)核・ミサイルを防衛の要に位置付け、大規模な通常戦力の必要性が低めることによって、国家の安全保障を犠牲にすることなく軍から資源を剥ぎ取ることが出来る。高級将校を次々と粛清してきたのも、軍を支配下に置くためだったのだろう。

36年ぶりの党大会の内容は「経済成長のために軍の影響力を弱める」という解釈を裏付けるものだった…。

つまり、100万の陸軍を維持して、いざとなれば38度線を津波のように乗り越えて韓国に殺到するという60年前からの時代遅れの有事シナリオを捨てて、核とミサイルにのみ抑止力を集中するという、これは「合理的な判断」に基づく軍縮──と言うと言い過ぎだが、軍事資源の集中化なのである。

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