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なぜ北朝鮮の金正恩第1書記は核開発と幹部粛清をやめられないのか?=高野孟

金正恩は狂気の独裁者か?

日米韓が北に対して手詰まりに陥る1つの原因は、その3国の好戦派に根強く巣くう「金正恩は狂気の独裁者であって、交渉の相手となり得ない」「圧力をかけ続ければいずれ体制崩壊する」という何の根拠もない思い込みにある。

日本政府内で30年以上も朝鮮半島情勢の分析に当たってきた元公安調査庁調査第2部長=坂井隆は、朝日新聞今年4月26日付が1ページを費やして掲載したインタビューで、こう語る。

正恩氏は、めちゃくちゃな思いつきでなく、合理的な判断で国家運営をしています。

国内的には科学教育の充実や植林の督励などもやっており、内政を無視した冒険主義と見るのは誤りです。

ただ明らかに権力継承までが短かったので、強引に、速いテンポでやらざるをえない。

(軍事挑発に韓国は怒っているという問いに)でも、これまで哨戒艦が沈没させられても、大砲を撃ち込まれても戦争にならなかった。南北は歴史的に、軍事境界線付近では多少のいざこざがあっても戦争までは決してしないという一種の認識を共有しています。

「何をするかわからない」と怖がるのでしょうが、北朝鮮は一定の合理性を備えています。

北朝鮮は、自由民主主義という視点からは最悪の社会かもしれないが、識字率や公衆衛生、インフラ建設などは他の貧困国よりは優れています。北朝鮮を多角的、冷静に見極めることが重要です…。

あるいは、カナダ人の軍事アナリスト=グウィン・ダイヤーは9月14日付ジャパン・タイムズの「北朝鮮のレトリックとリアリティ」と題した論説で、次のように指摘する。

北朝鮮の体制は、類例がないほど酷いものではあるけれども、仮にもっと立派な人たちが指導者になっても、この国の戦略的論理は全く同じだろう。そして、この体制は完全に偏執病的(もしくは被害妄想的:原文=paranoid)であるが、気が狂って「crazy」はいない。

同国は過去60年間、戦争を仕掛けなかったし、今戦争を計画中であると考える理由は存在しない…。

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