現在、多くの著名投資家が、次の金融危機を警告しています。不安になり防御態勢を取っている読者もいるでしょう。しかし、2008年のリーマン・ショックを分析して分かるのは、銘柄選択さえ正しければ、100年に1度の危機こそ、億万長者になる絶好のチャンスであるということです。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)
100年に1度の危機を歓迎せよ。絶好のチャンスが近づいている
「リーマン・ショック2」は到来するのか?
2008年9月15日、米国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破綻に端を発して、「リーマン・ショック」と呼ばれる世界的金融危機が発生しました。
日経平均株価も大暴落を起こし、9月12日の終値12,214円から、10月28日には一時6,000円台(6,994.90円)まで下落しました。
株価がわずか1カ月半で、約43%(半値)も下落したのです。リーマン・ショックは、100年に1度の金融危機だと言われています。
そして2016年現在。ジョージ・ソロスが中国経済の崩壊を予想して、S&P500を大幅にショート(空売り)しています。他にも様々な著名投資家が経済危機を予言しているので、不安になっている人も多いのではないでしょうか。
株式のポジションをいったん全部外した方がいいと考えて、実際に防御態勢を取っている人も読者の中にはいるかもしれません。
金融危機は、億万長者になれるチャンスで満載
しかし私自身は、著名投資家が金融危機を予想していても、株式はあくまで「企業の所有権」であるという考えを貫く方針です。
バフェットも次のように述べています。
農地やマンションを
家族で共同所有するように、
無期限で付き合っていこうと考える企業を
部分的に所有する。
家族で共同所有している農地やマンションを、頻繁に売買したいと考える人はほぼいないでしょう。株式もそれと同じで、「頻繁に売買する対象」ではありません。だから、金融危機が来るからといって、必要以上に怖気づく必要はありません。
と言っても、やはり不安はあると思います。
実際にはどんな銘柄でも安心・安全というわけではなく、企業によって、金融危機時のダメージは様々だからです。
そこで本稿では、2008年に起こったリーマン・ショックを「リトマス紙」のように利用して、実際にどのような企業群がダメージを受けやすいのか、受けにくいのかを検証していきます。
リトマス紙をつけて青から赤になったら酸性で、赤から青になったらアルカリ性です。企業も、金融危機に強いタイプと、弱いタイプの2種類に分かれます。
2008年のリーマン・ショックは、その適性を見極める絶好の機会だったのです。
1. ウェルズ・ファーゴをリトマス紙につけると?
それでは早速、バフェットの所有する代表的な4社(ビッグフォー)を調べていきましょう。
- ウェルズ・ファーゴ
- コカ・コーラ
- アメリカン・エキスプレス
- IBM
売上高、純利益、EPS(1株あたり利益)と、株価の推移を追っていきます。
2008年9月のリーマン・ショックの影響を多く受けた企業は、その後、売上高・純利益・株価が大きく下がる傾向にありました。
このリーマン・ショックをリトマス試験紙のように利用すれば、次の「リーマン・ショック2」に備えて、心の準備ができるわけです。
<ウェルズ・ファーゴ 業績>
年度 売上高 純利益 EPS
2006年 35,691 8,420 2.47
2007年 39,390 8,057 2.38
2008年 41,877 2,655 0.7 ←リーマン・ショック(利益の70%が吹き飛ぶ)
2009年 88,686 12,275 1.75
2010年 85,210 12,362 2.21 ←復活
2011年 80,948 15,869 2.82
2012年 86,086 18,897 3.36
2013年 83,780 21,878 3.89
2014年 84,347 23,057 4.10
2015年 86,057 22,894 4.12
※売上高、純利益=単位:百万ドル
※EPS、株価=単位:ドル
ウェルズ・ファーゴは2008年、ワコンビアと救済合併をしたため、売上高が2009年に倍増しています。
注目すべきは、2008年に純利益が約70%も失われている点です。EPS(1株あたり利益)も2.38ドルから0.7ドルに激減しています。ただし、売上高はまったく落ちていません(むしろ上昇している)。売上高が落ちていない点は、とても重要です。
売上高が確保できているのであれば、将来的にちゃんと利益が出せる可能性があります。逆に売上が取れていないのであれば、もうどんなに頑張っても利益は上げられません。
ウェルズ・ファーゴは、金融危機時に大きく利益が失われる銘柄です。しかしながら、わずか2年後の2010年にはEPSが2.21ドルまで回復しています。ほぼリーマン・ショック前の水準に戻っています。
<ウェルズ・ファーゴ 株価>
2006年 35.56
2007年 30.19
2008年 29.48 ←リーマン・ショック
2009年 26.99 (最安値:8.61)
2010年 30.99
2011年 27.56
2012年 34.18 ←ここまで横ばい
2013年 45.40
2014年 54.82
2015年 54.36
上記の株価はその年の終値(12月末)となります。2008年12月末には29.48ドルとなっていますが、翌年の2009年3月6日には8.61ドルという安値をつけています。1年足らずで株価が3.5倍も上がったのです。
2015年度のEPSは4.12ドルなので、当時の株価がとんでもなく安値です(今の利益水準で評価すると、PERが2倍です)。株式のボラディリティ(価格変動)が、いかに大きいかがわかるでしょう。
<ウェルズ・ファーゴ リトマス試験の結果>
- 金融危機時に純利益が約70%も減った
- 業績は2年後にはリーマン・ショック前の水準まで回復した
- 株価が一時、3分の1ぐらいに下がったが、すぐに持ち直した
- その後、株価は4~5年程、30ドル前後で横ばいが続いた
→ウェルズ・ファーゴは金融危機に弱いタイプ!
ウェルズ・ファーゴは、バフェットが永久保有銘柄に指定するだけあって、とても立ち直りが早かったです。2008年3月にウェルズ・ファーゴ株を拾えた人は、今ごろ億万長者でしょう。
金融危機や経済の崩壊を必要以上に警戒する人が多いのですが、長期投資家にとっては密かに「億万長者」になれるチャンスで満載なのです。こういう感じでワクワクしながら、次ページではコカ・コーラをチェックしていきます。