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「安倍カルト一強」の日本を、あの小沢一郎はどう見ているのか?=高野孟

あの時、あれほど申し上げたではないですか!

私にしてみれば、机をバンと叩いて「いまさら何をおっしゃいますか!」と叫びたい気分である。当時はブログ・ジャーナリズムの実験場「ザ・ジャーナル」が月刊数百万のアクセスを得て盛んだった頃で、自民党と検察とマスコミがスクラムを組んで小沢潰し政権交代阻止の包囲網を作ろうとするのに対して、私を筆頭に多くの書き手が集って「国策捜査批判、「小沢は辞めるなのキャンペーンを展開し、また小沢氏自身にも直接間接に、「こんなことで辞めないで下さい。このまま突っ切って『小沢総理』を実現して下さい」とお願いし続けた。

それについての私の当時の論稿は山ほどもあるが、1つだけ、民主党機関紙『プレス民主』09年4月17日号に寄せた一文を引用しよう。

世間では「小沢一郎代表は辞任せよ」の大合唱が続いているが、私は「辞任すべきでない」という意見で、自分が主宰するブログ・サイト「ザ・ジャーナル」でもその論調を繰り出している。袋叩きに遭うかと思いきや、むしろ正反対で「よく言った」「お前を見直した」といった賛成と激励のコメントが殺到して驚いたほどだ。

辞任すべきでない理由の第1は、郷原信郎教授が明快に指摘しているとおり大久保秘書を政治資金規正法の「虚偽記載」容疑でしか起訴できなかった時点で検察はすでに「敗北」しており、その敗北している検察の前にこちらから膝を屈して恐れ入る必要はないということである。こんな検察のやり方がまかり通るのなら、検察は気に入らない政治家を誰でもいつでも引っかけて叩き潰すことができることになる。検察ファシズムにも繋がるこのような公権力の乱用に対しては、民主党全体が闘って民主主義を守るべきであって、「民主党を巻き込むな」「辞任して個人で闘ってくれ」という議論は間違いである。

第2に、それにしても小沢代表が西松建設から巨額の献金を受けていたのは事実であり、それは違法ではないとしてもダーティなイメージは拭えないから、その言わば道義的責任をとって辞任すべきだという声もある。しかし、そもそも小沢一郎という政治家を清廉潔白のクリーンな人だと思っている者は、失礼ながら、誰もいない。田中金権政治の直系の弟子というか秘蔵っ子であったという過去の体質を何ほどか引きずっているであろうことも容易に想像がつく。米誌『タイム』3月23日号は小沢代表について「彼は一個の政治家としては最もラディカルな戦後政治体制への批判者であると同時に、その体制の最も典型的な代表者でもある」として、それを「小沢パラドックス」と呼んだ。過去の政治を知り尽くしているがゆえにそれを最もラディカルに否定できるというのが小沢という政治家の面白さであり、そこにこそ彼の破壊的なエネルギーの源泉があるのであって、そのことを民主党の皆さんはもちろん国民の多くも百も承知で、彼に政権交代への道を切り開く役目を託してきたのではなかったのか。何をいまさらということである。

第3に、検察が粗暴な行動に出た背景には、検察を含む官僚機構が抱く政権交代への不安感――「明治以来100年間の官僚支配を打破する革命的改革」を呼号する小沢代表への恐怖感があるに違いない。だとするとこの事件そのものがすでに政権交代をめぐる熾烈な権力闘争の予告編なのであって、ここで民主党が簡単に引き下がって、清潔だが毒気もないような当たり障りない人物に代表をすげ替えれば票集めがやりやすいという後ろ向きの発想に陥るのであれば、仮に政権が獲れたとしても「革命的改革」を成し遂げるような政権とはならない。

もちろん、西松建設からの献金を含めた自らの政治資金収支の実態について小沢代表自らが国民の納得を得られる説明をすることは避けて通れないだろう。その上で、代表がすでに党内に指示している「企業・団体献金の廃止」に向けての抜本的な制度改革案を早急にまとめ、出来れば他の野党と共同で提案し、さらに公明党をも巻き込んで、これを総選挙の中心争点の1つに押し立てて闘えば、必ず政権交代への道は開けてくると私は思う。世間から叩かれると代表を取り替えるという愚をこれ以上繰り返してほしくない……。

小沢氏と民主党がやろうとしているのはまさに「革命」なのであり、そうであるがゆえに旧体制の側は恐怖してなりふり構わぬ予防的な反革命工作を仕掛けてきているのであって、それに屈したのでは政権交代そのものに意味がなくなる――というのが私の趣旨であったのだが、それは実らなかった。5月11日の午後、移動中で切ってあった私の携帯に小沢氏の政治秘書から留守電が入っていて、「高野さん、あれだけご支援頂いたのに、すいません。本日夕方、小沢は辞任の記者会見を行います。本当にいろいろありがとうございました」と。

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