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消えた中国包囲網。日本はこのまま「一帯一路」の野望に飲み込まれるのか?=斎藤満

トランプ政権の親中路線はまやかしに過ぎません。日本政府や日本企業も、綺麗事ばかりの中国「一帯一路」構想の誘惑に負けないよう、冷静に判断すべき局面です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

中国の一帯一路構想に協力表明!? 日本政府はどこまで正気なのか

「中国包囲網」はどこへ消えた

米国にトランプ大統領が誕生して以来、日米の対中国戦略が揺れ動いているように見えます。

昨年の米大統領選挙キャンペーンでは対中国強硬論を唱えていたトランプ氏が、今では習近平国家主席を「大好き」と持ち上げ、これまでの強硬論がどこかへ消え去ったかのような印象です。これを受けて日本の対中国戦略も微妙に変化してきました。

安倍総理は第二次安倍政権誕生以来、今や中国こそ最大の脅威と位置づけ、「中国包囲網」を構築すべく、その周辺国を相次いで訪問してきました。

尖閣諸島の領有権を脅かす中国が、東シナ海から南シナ海へと、軍事力を伴った進出を進めているためで、これに対処するには日本としても東南アジアの関係国との連携が必要と考えたからです。

もちろん、これら関係国との連携にとどまらず、中国を取り巻く各国との関係改善を図り、軍事的にもいざという時に日本の味方をしてもらい、ともに中国に対峙する体制を構築する狙いがありました。

そのために、ロシアから中央アジア、インド、東南アジアを歴訪し、まさに日本の「友人」で中国を包囲する形を作ることに専心してきました。

このため、中国が進めるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、周辺国のみならず欧州各国が参加するのをしり目に、日本は米国とともにこれに参画せず、中国とは距離を置く姿勢を鮮明にしていたのです。

安易に乗ると危ない「一帯一路」

ところが、トランプ政権が対中国戦略を軟化させ、AIIBへの参加を検討すると言い出し、AIIBと対をなす「現代版シルクロード建設」ともいうべき習主席の長期戦略「一帯一路」構想に米国も関心を持ち始めました。

そして今年5月に中国で開催された「一帯一路」構想に関する大規模な国際会議に、米国は代表チームを参加させ、日本も親中派の二階幹事長の他、安倍総理の名代を送りました。知らぬ間に、日米ともに中国の長期世界戦略に巻き込まれていく構図が鮮明となってきました。

そんな中で、日本の企業も、次第に習主席の「一帯一路」構想に関心を持つものが増えています。中国事情に詳しい人物やコンサルタントに、この「一帯一路」構想の内容、ビジネスの観点からの妙味について、質問が増えていると言います。

しかし、この中国の「一帯一路」構想は、中国の苦しい事情、矛盾もはらんでいるだけに、安易にこれに乗ろうとするのは危険なのです。

Next: 日本を殺しかねない「習近平の野望」を後押ししているのは誰か?

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