積水ハウスは8月2日、他人に成りすまして土地を売りつける「地面師詐欺」の被害にあったと発表。しかしなぜ不動産のプロが63億円も騙し取られたのだろうか。(『アクセスジャーナル・メルマガ版』山岡俊介)
※本記事は有料メルマガ『アクセスジャーナル・メルマガ版』2017年8月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:山岡俊介(やまおか しゅんすけ)
1959年生まれ、愛媛県出身。神奈川大学法学部卒。零細編集プロダクションに2年半在籍し、29歳で独立。91年『週刊大衆』の専属記者を務めながら『噂の真相』『財界展望』などを中心に記事執筆。主な著書に『誰も書かなかったアムウェイ』『アムウェイ商法を告発する』(以上、あっぷる出版社)、『銀バエ実録武富士盗聴事件』(創出版)、『福島第一原発潜入記 高濃度汚染現場と作業員の真実』(双葉社)など。
不動産のプロ・積水ハウスが騙された「地面師詐欺」驚きの手口
積水ハウス、63億円の損害を公表
大手住宅メーカー積水ハウス<1928>(東証1部。大阪市北区)は8月2日、同社HPで、東京都内の不動産を分譲マンション用地として購入しようと63億円支払ったにも拘わらず、所有者側の提出した書類のなかに真正でないものが含まれていたことから、所有権移転の登記申請を却下されたとIRした。
この物件は、JR「五反田駅」から徒歩3分ほどの西五反田2丁目の約600坪の土地。現在、閉鎖された旅館建物と駐車場になっている。
ともかく、積水ハウス自らが、地面師詐欺事件にあったことを認めたわけだ。
本紙はこの間、いくつかの地面師詐欺事件を報じているが、大手マスコミはほとんど関心を示さなかった。それが今回大きく報じているのは、被害者が一部上場企業であり、また被害額が大きい故だろう。
不動産取引のプロがまんまと騙された理由
それにしても、なぜ、積水ハウスともあろう不動産取引のプロが騙されてしまったのだろうか。
問題の土地謄本にあるように、積水ハウスは、所有権移転請求権仮登記を付けた「IKUTA HOLDINGS(現在は東京都渋谷区に移転)」というところから、同日付けで、所有権移転請求権の移転請求権仮登記を付けている(7月25日解除)。
したがって、このIKUTAなる会社が仲介をし、手数料をもらうことになっていたのは明らかだ。
事情通は次のように解説する。
「このIKUTAのいまの女性社長は雇われで、オーナは元社長の『生田』なる男性(45)。彼はバブル時代、不動産取引でそれなりの財を成したものの、バブル崩壊でご他聞に漏れず厳しい事態に。
この生田氏はそれまでに積水ハウスと何度も不動産売買で取引をしている。それまでの取引があってこそ、今回、積水ハウスはこの話に乗ったんです」
IKUTAはホールドカンパニーで、傘下の婦人服小売会社では39億円(09年)、倉庫業会社では28億円(同)の売上げがあった。
そして積水ハウス側が会ったのは、所有者で、同地で「海喜館」という旅館の女将をしていた海老澤さん(70代)ではなく、本人に成り済ました別人女性だったわけだ。
結果、積水ハウスは今年6月1日に63億円の支払いをしたものの、6月9日に所有権移転取引申請を拒否されたという。
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