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原子力ムラの苦悶を象徴する東芝の粉飾決算。マスコミはなぜその肝心“金目”を突かないのか?=高野孟

マスコミが経産省のデタラメを拡散「原子力ルネッサンス」の幻影

背景には、この頃、米ブッシュ大統領が就任早々の01年5月に打ち出した「国家エネルギー政策」をきっかけに、世界的な「原子力ルネッサンス」が始まるという、今になってみれば幻想としか言いようのない期待が特に日本で異様なほど盛り上がっていたことがある。

ブッシュは、スリーマイル事故以来、停滞が続いていた米国の原子力をエネルギーの「主要な構成要素」と積極的に位置づけ、原子力産業を税制優遇や融資保証でテコ入れするという方向が盛られていた。

とは言え、後に次第に明らかになり、また議会や規制当局、環境団体との長いせめぎ合いの末にようやく05年に至って成立したこの政策のための法案を見ればますます明らかなように、これは40年の認可年限を60年まで延長するとか、定格外出力を認めるとか、どちらかと言えば既存の原発を再活用することに主眼があって、新増設をバンバンやろうなどということにはならなかった。

ところが発表当時、日本のマスコミは揃って「米、原発推進に転換/石油・ガスも増産/民主など反発『環境破壊招く』」(朝日01年5月17日付夕刊)、「米、原発推進へ転換/天然ガス、アラスカ採掘解禁」(日経同夕刊)と、大々的に報道し、さらに「画期的な大転換」「アメリカは再処理再開へ」「プルサーマルもやるに違いない」「世界的な脱原発の流れはこれでストップする」等々と、あることないことを憶測混じりで解説した。

図に乗った原子力ムラは「ブッシュ大統領が、原子力の推進とプルサーマルの検討を明言しました!原子力・プルサーマル重要です。安全です」というビラを印刷して原発立地の町村に捲いたりして大はしゃぎを演じた。

米欧のメディアではどこもこんな過大な扱いをしておらず、明らかに経産省の記者クラブを起点とした情報操作の結果だった。また国際エネルギー機関も「2040年までに原発の発電量は60%増える」などと煽り立てた。

それで国民が欺されるのは仕方がないとして、原子力のプロの佐々木までが鵜呑みにしてしまっては話にならない。

WHは、05年の国家エネルギー政策法案がどうなるか期待を込めて見つめてきて、それが決して原発ルネッサンスなどもたらさないことを悟って絶望したからこそ、泣く泣く身売りを決めたに違いない。本当にルネッサンスが来るなら身売りなどする訳がない。

冷静に考えれば子どもでも分かることが、なぜ東芝には分からなかったのか。はしゃいでいたのか、動転していたのか、謎である。

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