中国株や人民元を買い支えるため、中国が米国債を大量に売っています。8月はわずか2週間で12.6兆円分を売却というハイペース。またベルギー・スイスなど第3国の売りにも中国の影が。メルマガ『いつも感謝している高年の独り言』の分析をチェックしてみましょう。
流動性危機に直面している中国と米国
中国の米国債売りが鮮明となった8月
米国はこの世界同時株安の原因を、中国のでっち上げの経済統計やシャドーバンキング危機から出た株式バブルであると非難しています。
他方、中国は、誤ったタイミングでの米国の利上げ示唆であると反論しています。
お互いに相手のせいにしているのです。事実は、それぞれに大きな問題を抱えており、それをできるだけ隠したいだけなのです。
さて、双方とも困っている問題は、リスクの高まりによって流動性が消えるという、現実に起きている状況です。
この場合、中央銀行は常に金融システムに血液、つまりマネーを注入する。これが公開市場操作、オペレーションです。
中国政府は、今回の危機が進行した8月11日~25日、つまり2週間のあいだに、106B$以上の外貨準備を売却し、その資金を市場に供給したとの報道があります。
2週間で106B$と仮定すると、1週間で53B$(530億ドル、6.3兆円)。2015年6月の最新データで中国の外貨準備、米国債持ち高は1263.4B$ですから、この調子だと23.8週、じつに半年で米国債持ち高が消えることになります。
この計算はあくまでも、今回の中国の危機の規模、そして対抗策として打った注入額の規模を知るための手段です。
ベルギー・スイスの米国債売りも“本尊”は中国か
さて上記の報道はあくまでも推測の域を出ないものですが、次は中国消息筋からの確認報道です。中国は現在、米国債を売却をして公開市場操作に使用しています。
報道のポイント
★消息筋によると、中国の人民元切り下げショックの影響で人民元が大きく売られ、それを下支えするために米国債を放出したとのこと(人民元買い、米ドル売り)。
★ある情報筋(公開情報ではないために匿名希望)によると、この米国債の売却は中国本土からだけではなく、ベルギーおよびスイスの代理機関経由でも行われたとのこと。
★別の消息筋によると、中国は米国金融当局とこの売却に関して連絡を取っているとのこと。その売却額については明らかにされていない。
この報道で重要なのは、中国がベルギー、スイスの某機関を利用して米国債を買っていたということです。
かねてより、ベルギーが米国債の保有を大きく増やしたのは大きな謎でした。私は米国自身が購入してベルギーに預けていたと想像していたのですが、本当は中国だったのです。さらにスイスにも預けていたようです。
中国人民銀行は米国債を大量売却しているのです。いつの日か米国は金利上昇という審判の日を迎えます。
中国は外貨準備の金準備も売却しているでしょうか?利息のない金準備を売っているのか?いないのか?あなたなら、どちらを選ぶでしょうか?
グラフ(ア)の赤色領域は中国の米国債持ち高の減少予想グラフです。後ろの緑色領域は日本の持ち高を示しています。日本はピーターパンの指導の下に買い続けるのでしょうか?
グラフ(イ)はベルギーとスイスの1月から6月までの持ち高の変動です。1月2ヶ国合計で560B$あったものが、6月では425B$に減っています。135B$の減少です。この減少分は中国売却分なのかどうかは不明ですが、前述の内部消息筋(中国筋)の話の内容からして可能性は高い。
そしていまだ公表されていない7月、8月もたぶん中国本土、香港、ベルギー、スイス等で米国債を売却している可能性も高い。
ロシアも売却している。ペトロダラーシステム(編注:原油など資源取引での米ドル決済のしくみ)の根幹である湾岸産油国も売却している可能性が高いのです。
となると今後、米国の債務を誰が買い支えるのか?そしてそれは未来永劫維持可能なのか?もし米国のGDPが縮小した場合、何が起きるのか?どこかの国のピーターパン総裁に解説をお願いしたいものです。
※太字はMONEY VOICE編集部による