この10月に国民一人ひとりに12桁の個人番号が通知され、来年1月から実際の利用がスタートするマイナンバー(社会保障・税番号)制度。でも、マイナンバーってなに?マイナちゃんがなに言っているのかまったく分からないよ!という方もまだまだ多いですよね。そこでマイナンバー制度の便利なところ、怖いところを、メルマガ『らぽーる・マガジン』が分かりやすく解説します。
「マイナンバー制度」で、私たちの生活はどう変わるのか?
30年前から国の悲願だった「国民総背番号制」
マイナンバー制度の話が最初に出てきたのは1965年「国民総背番号制」の議論です。
全国民に背番号を付与するということが、囚人を彷彿させるとして多くの国民の反感を買い、所得や財産などがあらわになる、プライバシーの侵害の恐れありという論争が巻き起こりました。
次に世の中に登場したのが1980年「グリーンカード(少額貯蓄利用者カード)」制度です。
いわゆるマル優と呼ばれる元金300万円までの預金利子非課税制度で、他人名義口座開設などの不正があり、それに対応するという目的で登場したグリーンカード制度ですが、金融機関の反対にあい、制度自体が廃止となりました。
次に登場したのが「住民基本台帳ネットワークシステム」です。2003年の話ではありますが、すっかり忘れてしまっていることでしょうね。このときもプライバシーの侵害がかなり議論されました。
一部の自治体は導入そのものを拒否したことが話題になりました。
「マイナンバー制度」で、議論はプライバシーから効率性へ
何度も登場しては反対の波に押されて消えていった総背番号制度が、ふたたび脚光を浴び、今度は強引にでも押し通せたのは、一つは2007年におきた「消えた年金問題」と呼ばれる、社会保険庁の個人データ管理の問題発覚が背景にあるようです。
年金保険料納付記録と年金給付記録、戸籍などが一元化されていない弊害が指摘されました。
社会保険料未納問題、生活保護不正受給なども、個人の所得管理の必要性を助長しました。
さらにマイナンバー制度の議論が高まったのは、民主党政権下での「給付付き税額控除」制度です。所得控除だと、高額所得者にも恩恵があることから、低所得者に限って定額給付を行おうとするもので、そのためには各個人の所得の把握が必要になってきます。
生活保護費支給もそうで、各個人の所得を把握することで無駄を省き、確実に給付金が手渡されるというものです。
いつの間にかプライバシーの侵害議論はなりを潜め、効率性が全面に出てきたわけです。
消費税率引き上げに伴う低所得者層への給付も、マイナンバー制度の必要性を訴える良い機会となっているようです。
「事務手続きの効率化」で減るのは公務員の数か、個人の自由か
ここまで述べてきたように、社会保険料納付および年金支給の確実性からの観点と、低所得者層への手立てを明確にする目的でマイナンバー制度導入が議論されていたにもかかわらず、いつの間にか、この制度に各個人の預金情報も組み入れようとする動きが出てきています。
それだけでなく医療情報、投薬履歴や医療機関受診履歴までもが組み入れられるようです。ワクチン接種履歴も加わるなど、完全に個人情報のすべてが織り込まれるようです。
マイナンバーカードがなければ銀行口座は作れない、証券口座も作られず投資もできない、つまりマイナンバーが付与されていない人は日本国民でないということになるのです。
その制度がもうこの秋からスタートしようとしているのです。ほとんどの国民が理解していない、報道もほとんどされない中、制度だけが粛々と前に進んでいるのです。
マイナンバー制度で、事務手続きが効率的になるのであれば、公務員数を大幅に減らすことができるはずですよね。
年間所得2000万円以上の方は、年末に国税局に「財産および債務の明細書」を提出することになっていますが、提出しなくても罰則等が儲けられていないため、おおよそ該当者36万人と言われているうち、提出した人は44%の約16万人だそうですが、それが来年の確定申告では「明細書」が「調書」となり、マイナンバーを記載して提出することになるようです。
国外送金も規制が厳しくなっています。完全にこの国は個人をがんじがらめに管理することになるわけです。
『らぽーる・マガジン』(2015年7月27日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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