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人口増加=経済成長は思い込み!経済成長の「真実」に人口は関係ない

そして、二つ目は、そもそも経済成長は「生産年齢人口の増加」によって達成されるわけではないという点になる。

厳密にいえば、インフレギャップが成立している環境下で、生産年齢人口の増加が経済成長に「全く貢献しない」というわけではない。とはいえ、実際に高度成長を果たした時期の日本は、経済成長率が平均で10%近かった。高度成長期の生産年齢人口の増加率は、平均で1.71%である。高度成長期の日本の経済成長率を「生産年齢人口の増加」のみで説明するのは、無理があり過ぎるのだ。

日本の高度成長に「最も貢献した」要因は、総人口の増加でも、生産年齢人口の増加でもなく、生産性の向上だ。すなわち、生産年齢人口一人当たりの生産(モノ・サービスの生産)の拡大こそが、日本に経済成長をもたらしたのである。

高度成長期の生産性上昇率

上記の通り、高度成長期の「生産年齢人口一人当たりの実質GDP」は、7%前後の成長を見せた。

総人口の増加が年平均1.12%。生産年齢人口の増加が年平均1.71%。生産年齢人口一人当たりの実質GDPの成長率が7%弱。

さて、日本に高度成長をもたらしたのは、総人口の増加だろうか。あるいは、生産年齢人口の増加なのか。「影響力」の割合を見る限り、間違いなく生産年齢人口一人当たりの実質GDPの成長率、すなわち生産性の向上だ。

インフレギャップ環境下では、生産年齢人口の増加が経済成長をもたらしたように「見える」かも知れない。とはいえ、実際には生産者数の増加よりも、生産性の向上効果の方が圧倒的に影響が大きいのである。

あるいは、生産年齢人口が減少することで、経済成長率が低迷するという「人口オーナス」論というものがある。インフレギャップ環境下において、生産年齢人口が減れば、「生産性の向上効果が薄い」という前提の下では、経済成長率は確かに下がるだろう。それを受け、「生産年齢人口の減少=経済成長低迷」という人口オーナス論が広まったわけだが、ポイントは生産年齢人口の減少そのものではない。

単に、デフレで生産性の向上が望めない時期に、実質賃金の低下(デフレ期には間違いなく実質賃金は下がる)を受け、生産年齢人口が減少するというだけの話だ。すなわち、「生産年齢人口減少⇒経済成長率の低迷⇒実質賃金の低下」というプロセスが成立しているわけではないのだ。正しくは、「デフレ化⇒実質賃金の低下⇒少子化により生産年齢人口の減少」という現象が発生していただけに過ぎないのである。

そして、生産年齢人口減少は必然的に経済をインフレギャップ化させ、生産性を向上させる絶好の機会が生まれる。すなわち、デフレによる実質賃金の低下、そして少子化進行による生産年齢人口の減少こそが、インフレギャップと生産性向上という「経済成長」をもたらすスタビライザー(安定化装置)の役割を果たすのである。

落ち着いて考えてみれば、誰にでも理解できるはずだ。

この世界では、人口ボーナス論も人口オーナス論も、「常に」成立するわけではない。何しろ、両者ともに「セイの法則」を前提としている。

経済成長の「真実」には、人口は関係ない。単に、インフレギャップ下で生産性を向上できるか否か。ただ、それだけの話に過ぎないのである。

週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.324より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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