足元の株価市場を動かしたヘッジファンドの事情
市場価格は売り買いが一致した時点で付くが、その原則は時間的余裕のない投資家が歩み寄るというものである。10月中までに解約するかの結論を出されてしまう運命にあるヘッジファンドには時間的余裕がない状況であることを考えると、彼らが歩み寄っている可能性が高い。
つまり、足元の株式市場では、ヘッジファンドの事情が強く反映した株価形成がなされているということである。
換言すれば、彼らが必要な商いを済ませる、あるいは投資家から解約等の最後通牒を突き付けられる10月は、ファンダメンタルズから乖離した動きが見られる可能性が高いということだ。
9月14日のBloombergでは「ある投資家は権利行使価格20ドルの11月限コール(買う権利)を約7万6000枚購入と同時に、同じ枚数の同26ドルの11月限コールと約9万5000枚の同13ドルの10月限プット(売る権利)を売却した」ことが報じられた。
この戦略が成功するかは分からないが、少なくともこうしたポジションをとった投資家は、10月の取引最終日の19日まではボラティリティは大きく低下せず、それ以降ボラティリティは上昇に転じることを見込んでいる。一般の投資家にとって重要なことは、「ある投資家」の見通しが当たるかどうかではなく、こうしたポジションを正当化する論理が足元の株式市場に存在しているということだ。
「ある投資家」がこうした見通しを立てるのは、ヘッジファンドの「45日ルール」に当たる10月中旬まではパフォーマンスの悪化を招いてきたショートポジションの断続的な買い戻し圧力によって株価が下支え或いは上昇し、それ以降は中間選挙を控えて長期投資家が動きにくいなかで、ヘッジファンドの解約や撤退に伴うポジション解消市場のボラティリティを上昇させるという見通しを持っているからだろう。
ショートポジションの買い戻しを余儀なくされる投資家にとって、「悪材料は蜜の味」なのだ。
10月中旬以降は要注意
ボラティリティの上昇を招くのが株価の大幅上昇か下落なのかは定かではないが、10月の中旬を境に一旦市場状況が変わる可能性があることは頭に入れておいた方が賢明そうだ。
10月中旬まで「悪材料は蜜の味」であっても、それ以降は「悪材料は悪材料」に変化する可能性があるからだ。
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『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2018年10月1日号)より一部抜粋
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