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ロシア機撃墜にも関与?イスラム国を支援するイスラエルの狙い=高島康司

EUとトルコ、知られざる「2011年の合意」が発端だった

それはフランスの地政学のアナリスト、シェリー・メイサンが報じた事実である。

2011年、フランスのサルコジ政権は、アレイン・ジュペ外相をトルコに派遣し、シリアとの友好的な関係を断ち敵対するように、当時アサド政権と親密な関係にあったエルドアン首相を強く説得した。敵対の見返りは、かねてからトルコが念願しているEU加盟交渉におけるフランスの賛成票である。

最初は躊躇していたエルドアン首相であったが最終的には説得され、当時のダイオトール外相(現在の首相)とフランスのジュペ外相は、トルコがシリアと敵対関係に入るためのシナリオを立案したという。

このシナリオの実現が、2011年の民主化要求運動弾圧に対するエルドアン政権の過剰な反応と外交関係の悪化であった。その後2012年には、トルコ国境においてシリア軍がトルコ軍機を撃墜し、関係の悪化は決定的となった。

このトルコ軍機の撃墜は、かなり謎の多い事件だとされている。飛行していたアメリカ製のファントム戦闘機は1960年代の旧式な戦闘機であり、100メートルの超低空をシリア国境すれすれで飛行していた。これをイスラエル軍機と誤認したシリア軍が、地対空ミサイルで撃墜したとされる。

この事件は、あえてシリア軍に誤解を与えるような地域を超低空で飛び、これをわざと撃墜させて、シリアとの関係の悪化をさらに決定的なものにしようとしたエルドアン政権の自作自演なのではないかという疑惑が絶えない。これが偶発的な事件でなかったとしたら、これはジュペ外相とダイオトール外相が立案したシナリオの一部であった可能性もある。

見返りとしてのEU加盟

しかし、やはりここでもっとも注目しなくてはならないのは、2011年にトルコのEU加盟交渉におけるフランスの賛成票が見返りとして与えられていることだろう。

トルコがこれを見返りとして、これまで非常に親密だったシリアとの関係を断絶したことを見ると、トルコにとってEU加盟がいかに国家的な悲願であるのかがよく分かる。

ちなみにトルコは1987年からEUへの加盟申請を行っていたが、1915年に起こったアルメニア人虐殺、現在のクルド人問題、キプロスとの対立などの人権問題が原因となり、2006年に加盟交渉は凍結され、まったく進展を見せていない。

つい最近までは、トルコはそもそもヨーロッパなのかというトルコの国家としてのアイデンティティーを問う声も大きく、交渉再開のメドはまったく立っていなかった。トルコのEU加盟は不可能だろうとの見方が一般的になっていた。

だが、トルコによるロシア軍機の撃墜直後、トルコのEU加盟交渉の加速が宣言されたのである。EU加盟を国家的な悲願とするトルコにとって、これは大きな成果であることは間違いない。

このように、2011年から見て行くと、EUはトルコのEU加盟交渉を見返りとして与えながら、トルコの外交方針に深く介入している様子がよく分かる。

今回のEUによるトルコ支援は、トルコがシリア難民のヨーロッパへの入国をくい止めることへの見返りである。たしかにそのような側面はあるだろう。だがそれは、表向きの理由である可能性が高い。

やはりこれは、トルコによるロシア軍機撃墜という非常にリスクの高い作戦を実施したことへの見返りではないのだろうか?その可能性は高いと思う。

イスラエルが関与した可能性

このように見ると、やはり今回のロシア軍機の撃墜は偶発的な事件ではなく、起こるべくして仕掛けられたものであり、それにはEUとアメリカが深く関与していると見て間違いないように思う。トルコ単独で引き起こした事件ではない。

では、関与しているのはEUやアメリカだけなのだろうか?イスラエルはどうなのだろうか?

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