Googleが「Apple Card」の類似サービスを始めにくい理由
1つ目が「Apple Card」です。
Apple Cardは、Appleとゴールドマン・サックスが提携して発行するクレジットカードです。
- Apple Storeでの購入やAppleの提供するサービスの購入は3%のキャッシュバック
- Apple Store以外でApple Payを利用した購入は2%のキャッシュバック
- Apple Payの取り扱いがない店舗で物理的なクレジットカードを利用した購入は1%のキャッシュバック
という具合にかなり大きなキャッシュバックを提供しているのが特徴です。
つまりスマホでの決済だとキャッシュバック率が高く、リアルのカードを使ったApple Payを利用しない決済だとキャッシュバック率が低く設定されています。
ちなみに、クレジットカードの年会費などは一切無料で、リアルなカードは一般的なプラスチックのカードではなく、チタン製のプレートにレーザーで刻印され、使用期限やカード番号などが一切記載されていないAppleならではのシンプルでカッコ良さを追求したデザインです。
アメリカで最も人気があるクレジットカードの特典はキャッシュバックなので、ある意味王道を進んでいるようにも見えますが、実はこれはGoogleから見ると、非常に嫌な打ち手であることは間違いありません。
GoogleがApple Cardのような自社ブランドのクレジットカードを大々的に提供することは、実は相当難しいことだからです。
というのは、Googleの検索・広告ビジネスに金融系のクライアントが占める割合は無視できないほど大きく、自社で競合するサービスを大々的に宣伝すると、Googleの屋台骨である広告ビジネスに大きな影響が出かねないからです。
少し古い2011年のデータではありますが、Googleの広告売上のトップ10の業種が示されています。トップ10の業種のうち、金融カテゴリが最も大きく、このカテゴリの広告主と直接競合するようなサービスをGoogleが提供するのは、Googleの広告ビジネスの巨大さを考えればかなり困難だと言えるでしょう。
つまり、Googleは既存ビジネスのクライアントとのコンフリクト(対立)を恐れて、アップルカードと同じような自社サービスを始めることは、かなり困難であるというのが私の見方です。