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オンキヨーまでも家庭用音響事業から撤退。なぜ日本企業は次々と敗北するのか=冷泉彰彦

1)衰退のきっかけはMP3騒動でした。1995年に「ウィンドウズ95」が登場すると、世界的にコンピュータの普及が進みました。これを受けて、当時は音楽ビジネスの巨大メディアであったCDというディスクから簡単にオーディオのファイルが取り出せる」ことが明らかとなり、違法アップロード、ダウンロードが横行、CDという「物理ディスク」の販売というビジネスモデルは揺らぎ始めました

その際に、アップルの動きは戦略的でした。2001年というタイミングで、「iPod」を発売、これは違法ダウンロードが横行しているという環境に、高機能な再生用のデバイスを投入することで「音楽のファイル販売というビジネスを立ち上げようというものでした。

アップルは、結局は2010年代の後半になって、「Spotify」による音楽ストリーミングサービスの挑戦を受けることで、音楽について「ファイルの販売」から「定額ストリーミングに移行しますが、いずれにしても物理的なディスクを販売するというビジネスモデルを破壊して、再生用プレーヤを普及させ、のちにはこれを携帯電話と統合させる中で、音楽業界をディスクのない世界に変えていきました。

日本勢はこれに対して完全に受身となり当初は「違法ダウンロード反対」の警察的な活動に熱心になる中で、やがてアップルの覇権が確立すると、ソニーなどは、完全にこれに追随するということになったのです。

2)一方で、そのCDですが、その規格が低すぎる」という問題もあります。このフォーマットは、ソニーが主導して決定したものですが、サンプリング周波数はともかく、16ビットというのは低すぎます。このプアな仕様が採用され、その後、長く続いたことで、世界中の音楽ファンの耳がダメになり高音質のオーディオ機器のニーズも生まれないということになったのです。

3)そのCDがプアという問題ですが、これに対するアップデートとして、1999年にソニーとフィリップスが「スーパー・オーディオCDSACD)」というディスクフォーマットを出しました。このSACD、今でも細々と続いていますが、完全に失敗でした。

まず、今度はフォーマットが高すぎたのです。また、違法アップロードへの被害感情が強かったために、このSACDはセキュリティが高すぎて、ディスクの汎用性も損なわれていました。結果的に、高音質の音楽ファイルについては、「ハイレゾ」のダウンロード販売ということに落ち着きつつありますが、SACDなどというフォーマットにこだわったのも迷走であったと思います。

4)そうであっても、今でもオーディオ産業というのはあります。英国やアメリカ、北欧などでは高級なスピーカーやアンプのメーカーが生き残ったり、新創業したりしていて、市場もちゃんとあります。また、スマホの普及に伴って、ヘッドホンやイヤホンの市場というのは、むしろ爆発的に拡大しています。

にも関わらず、業界で日本勢は無条件降伏に近いのは何故なのでしょう?一つは、世界の若者のニーズをつかめないということがあります。若い人が入ってこない、海外駐在しても現地のディープな若者カルチャーにリーチできないなどの要因が重なっていると思います。

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