いまだに老後2000万円問題がくすぶっている。政府が「自助努力」という言葉を削除しても、絶対にそれは不可欠だ。年金の繰り下げ受給は得か?で考えたい。(『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』矢口新)
※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる —有料版—』2019年6月17日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。配信済みバックナンバーもすぐ読めます。
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。
政府が「自助努力」の言葉を削除しても、それは絶対に不可欠だ
「老後2,000万円」問題の対抗策は
金融庁報告書で「老後資産に2,000万円が必要」だということが明らかになり、長らく物議を醸した。夫が65歳以上・妻が60歳以上の無職世帯(筆者注:有職期間に年金保険を払い続けた後、定年となり受け取る側に回った世帯)が年金だけで暮らす場合、毎月約5万円の赤字が出ると試算との資産だ。この後、30年間生きるには約2,000万円が不足するとした。
一方、麻生財務相は、「老後資産に2,000万円が必要」はとんでもないガセネタだとし、報告書の撤回を求め、年金制度は安泰だとした。
また、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)がまとめる2020年度予算案の編成に向けた建議(意見書)では、1年前の建議に明記した私的年金などでの「自助努力」との文言は削除された。自助努力を促すことは、公的年金制度の失敗を意味するとの「誤解」を避けるものらしい。
この問題については、代表的な経済紙・経済誌が以下のように取り上げている。
※参考:人生100年時代、2000万円が不足 金融庁が報告書
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45636720T00C19A6EE8000
※参考:老後資金問う「2000万円」 家計どう対処すべきか
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46101080U9A610C1PPE000
※参考:老後「2000万円不足」問題、平均値が独り歩き
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46163990V10C19A6EA3000
※参考:残念ながら「老後資金2000万円必要」は歴然とした現実である
http://cl.diamond.jp/c/aegyajmLlo4fsfab
※参考:年金「繰り下げ受給」は本当に得か?ポイントは健康寿命
http://cl.diamond.jp/c/aegyajmLlo4fsfak
※参考:「年金だけで死ぬまで遊んで暮らせる」と日本人をミスリードをしたのは誰か
http://cl.diamond.jp/c/aegyajmLlo4fsfap
※参考:老後に本当に必要な金額は一体いくらなのか?
https://toyokeizai.net/articles/-/286838
自助努力なしで生きられるとは思えない
実は、私は上記の記事のどれも読んでいない。読むまでもなく、日本の年金行政は机上の空論にすがっているとしか思われないからだ。
2,000万円という金額はともかく、麻生財務相が豪語するように、民間の自助努力がいらないほど、本当に日本の年金で日本人が生活して行けるのだろうか?
いくらあれば生活できるのかは、人それぞれだとは思うが、需給額は以下の通りのようだ。
※参考:実際に支給されている国民年金の平均月額は5万5千円、厚生年金は14万7千円
https://seniorguide.jp/article/1001439.html
※参考:2019年最新|年金支給額の平均は国民年金5.5万円・厚生年金14.7万円
https://avenue-life.jp/blog/money/pension/
これは実際に支給されている金額なので、ひと昔前の今より高額の分から、現在支給が始まった分までの平均ということになる。今後の平均額は、非正規雇用の増加だけを見ても、おそらく下がっていくと思われるが、今回の話の筋とは逸れるので、そこには触れない。