とはいえ、政府が援助するから大丈夫?
年金が大丈夫だとする人の根拠は、不足分は政府が援助するからだとされる。これが、年金行政は机上の空論だと思える理由の2つ目だ。
歴代の政権は、単年度の財政赤字、プライマリーバランスの黒字化を約束してきた。安倍政権も例に漏れず約束はしたが、達成時期を後へ後へと「繰り下げ請求」している。
ところが、これも冷静に現実の数値を判断すると、黒字化は不可能なのだ。
安倍政権は消費税率の引き上げを決定した。ところが、消費税を上げると、その見返りに所得税や法人税が減ることが分かっている。
以下のグラフで分かるのは、消費税を導入した平成元年度に法人税収がピークをつけ、2年後には所得税収がピークをつけたという事実だ。
そして、税率を5%に引き上げた9年度には名目GDPがピークをつけ、所得税は未だにその時の水準さえ超えられないでいる。
理由は、消費税が利益ではなく、売上にかける税金であるため、経済成長が止まるからだ。
消費税増税が経済成長を止める
このグラフが教えてくれるのは、消費税は経済成長を阻害するので、所得税収、法人税収を減らすため、消費税収と引き換えに、総税収(棒グラフ)がかえって減ることになることだ。
つまり、消費税を導入したために、これだけの金融政策やアベノミクスを行ってさえ、平成2年度の総税収60.1兆円を未だに超えられないでいるのだ。
平成21年度からは、歳出約100兆円時代が続いている。ところが、この10年間の税収は最少では40兆円に満たず、最大でも60兆円に届かない。
当然、累積赤字や穴埋めのための公的債務は膨れ上がる一方だ。
※参考:日本政府債務、深刻度は大戦末期並み
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2842922022032018000000
※参考:世界の政府総債務残高(対GDP比)ランキング
https://ecodb.net/ranking/imf_ggxwdg_ngdp.html
「消費税撤廃」こそ財政黒字化の近道
消費税は安定税収だと言われている。グラフを見ても分かるように、景気後退期でも安定して税収がある。このことは同時に、景気拡大期でもそれほど増えないことを意味している。
一方、所得税や法人税は(少なくとも平成元年の税率であれば)景気さえよければ、大きく上振れするのだ。
このことは、40兆円という赤字幅を埋めるには、消費税を撤廃し、経済成長を促すことで、所得税収、法人税収を増やすしかないことが分かる。
一方、ここでの消費税率の引き上げは、政府は財政再建をもはや放棄したことを意味しないか?