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オンキヨーまでも家庭用音響事業から撤退。なぜ日本企業は次々と敗北するのか=冷泉彰彦

また高級なスピーカーの部門では、日本勢は「測定結果にこだわる」とか「重ければいい音」だというオカルトな迷信に束縛されているという面があります。測定結果というのは、スピーカーから出た音をわざわざ再びマイクで拾って、その「周波数特性」をグラフにしたものです。

つまり、低い音から高い音までが「フラット」、要するにある高さの音が特に大きく再生されたり、小さくなったりするのではなく、全体的にまっすぐに満遍なく再生できるのが特上」だとされます。これが日本式の信仰です。

実は、この発想法は全く無意味なのです。というのは、人間の耳の「周波数特性」というのは決してフラットではなく、凸凹になっていて、聞き取りやすい音域というのには偏りがあるのです。

ですから、カメラの世界では「印象色」とか「記憶色」というのがあるように、人間の大脳に届いた時点での音のイメージというところから判断しなくてはならないわけで、例えば英国のスピーカー産業などは、徹底的にそれをやっています。つまり、本当に音楽の好きな技術者が自分の耳で判断してチューニングしているのです。

ですが、日本のオーディオ産業は、基本サラリーマン集団であって、クラフトマンシップの集団ではありませんから、「検査結果が良ければ高級」というオカルト信仰でやってきたのです。ですが、それは世界に通用しないので、日本のオーディオマニアが高齢化すると、もう市場は消滅ということになりました。

例えばですが、せめてオーディオ産業の各企業が、日本の「ニコン、キャノン」という2大カメラメーカーのように(あるいは、そこにフジを加えてもいいですが)、しっかり世界中の写真家との対話を続けて厳しい要求を満たすように製品のクオリティを正しい方向に向けていれば、こんなことにはならなかったと思います。

今でも、世界にはジャズやクラシックなど、アコースティックな音楽を「いい音で聴きたい」という消費者は大勢います。そのためには、数千ドルから数万ドルは投じてもいいというお客もまだまだたくさん存在しています。こうした市場を、結局のところ日本勢は押さえることができませんでした。

また、スマホのアクセサリとしてのイヤホン、ヘッドホン市場は高級化と拡大の一途を進んでいますが、一部日本勢で健闘している部分もありますが、こちらは中国勢の躍進が目立ちます。これも「測定室での優等生」的な商品ばかりの日本勢と、「印象音を派手にする」ためには思い切ったチューニングのできる中国勢の差、そして後はマーケティング能力ということだと思います。

とにかく、日本のオーディオ産業は、ほぼ消滅という寸前まで来ています。その「敗北の本質」をしっかり理解して、例えば自動車産業などが同じ運命をたどることにないように、しっかり反省することが重要と思います。

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image by:360b / Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2019年5月28日号を一部抜粋・再構成したものです。興味を持たれた方は、ぜひこの機会に『今月すべて無料のお試し購読』をどうぞ。

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冷泉彰彦のプリンストン通信』(2019年5月28日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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