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マイナス金利時代、高利回り個人向け社債(劣後債)は「買い」なのか?=久保田博幸

劣後債「期限前償還条項」の注意点~大半が残存5年で繰上償還に

金融機関の発行する劣後債には、満期前に繰上償還される「期限前償還(コーラブル)条項」が付いているものが比較的多い。劣後債の期限前償還条項とは、発行体が債券の繰上償還をするかどうか決めることができるもので、いつ償還となるか事前には確定していない。

しかし、劣後債を自己資本とみなすルールには、劣後債の償還まであと5年以上残っていなければならない、というルールが存在する。残存期間が5年を切ると年率20%で累積的に減価しなければならないのである。このため、実際には残存5年のタイミングで繰上償還となるケースが「大半」となっている。劣後債は、BIS規制において自己資本に算入可能であるため、金融機関には残存5年のタイミングで繰上償還し、再度劣後調達を行うインセンティブが働くのである。

ただし、絶対にコールがかかるというわけではない。これまで大手金融機関が発行した劣後債で、繰上償還が見送られた事例は少ない。しかし、発行体の財務内容が大幅に悪化し繰上償還するだけの余裕がなかったり、金利の上昇などにより再調達コストが大幅に上昇した場合などでは、期限前償還が見送られる可能性があることにも留意する必要がある。

購入するなら償還まで持ちきりが前提、旨みは少ないか?

個人投資家にとって劣後債を買い付ける際には、上記の劣後債そのものの性質とともに、買付金額の大きさ、そのタイミングの難しさ、さらに途中売却の難しさも意識する必要がある。

金融機関の発行する劣後債の最低単位は通常の個人向け債券よりも大きくなっている。劣後債は売りたい時に必ず売れるとは限らず、その流動性の低さに注意が必要である。

個人向け国債は途中売却の際に財務省が買い取るが、劣後債は発行する銀行側が買い戻す義務はない

ただし、発行した証券会社が買い取ることは考えられるが、流動性がない分、購入価格よりもかなり安い値段で買い取ることも考えられるため、できる限り途中売却は避け、基本的には購入したら償還まで持ちきることを前提に購入する必要がある。

そして本来であれば上記の条件が付いているため、金利は比較的高く設定される。今回も預金金利の0.001%などに比べれば高そうに見えるが、ある程度のリスクもありながら0.1~0.5%しかない実質5年債の社債を購入すべきかは個人的には疑問である。

現在の金利は日銀により作為的に作られたマイナス金利であり、その反動なども意識して資金は待機すべきものと思われる。無理にリスクは取るべきではない。その意味では最低金利の0.05%が保証されている個人向け国債や少なくともマイナス金利ではない預貯金に資金を置いておくのがベターであると考える。

【関連】日銀の白井審議委員がマイナス金利導入に反対票を投じた理由=久保田博幸

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牛さん熊さんの本日の債券』2016年2月24日号より
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