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「PayPay連合」シェア60%超えを公取が承認したのはなぜか?ヤフー・LINE統合=シバタナオキ

経営統合で「ニュース配信」事業は競争を制限するか?

ではまず、「ニュース配信」事業について、公正取引委員会はどのような判断を下したのでしょうか?

結論からいうと、ニュース配信事業において、両社の統合が実現しても競争を制限することにはならないと判断されました。

理由は、ニュース配信事業を有料・無料・ウェブ・モバイルなど様々な観点から検討した結果、新規の参入障壁が比較的低い事業であることと、無料のニュースサイトが多数存在するため、需要者からの競争圧力が認められる(消費者が好きな無料ニュースサイトを自由に選べる環境にある)という理由から、「適正な競争が働く」と判断されました。

またそれ以外では、以下に記載のある通り、ポイントが記載されています。

第三者ヒアリングで寄せられた競争上の懸念について

② 当事会社グループが、ニュース記事を提供しているメディアに対して、他の無料ニュース配信事業者に記事を提供しないよう圧力をかける場合が考えられる。しかしながら、下記の事情を考慮すれば、このような懸念は生じないと考えられる。

ア ニュース記事を配信するメディアが多数存在すること
イ 現状、主要メディアは多数の無料ニュース配信事業者と取引していること
ウ 現状、メディアは当事会社グループから圧力をかけられているような事実はないこと及びそのような要請があっても対応しないと述べていること

出典:Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について(公正取引委員会:2020年8月4日配信)

要するに、ヤフーとLINEという、2大ニュースサービスが合併しても、市場構造や主要メディアのスタンスから、他のニュースサイトに不当に圧力をかけるといったアクションは難しいと判断したというわけです。

経営統合で「広告」事業は競争を制限するか?

次に、「広告」事業については、どのような判断を下されたのでしょうか?

少し長いですが、資料の中でポイントとなる記載は以下になります。

(3)間接ネットワーク効果の存在について

当事会社グループは、ニュース記事、マンガ、動画、ゲーム配信等といった様々なコンテンツを通じて、広告枠を広告主・広告代理店に販売している。当事会社グループの各コンテンツを利用する者の数が増えれば増えるほど、当該利用者が広告を閲覧する機会も増えるため当事会社グループのデジタル広告事業の魅力は増加することになる。また、当事会社グループが販売する広告枠への広告の出稿は、通常、当事会社グループが行う特定デジタル広告仲介事業を介して行われることが多いことから、当事会社グループの特定デジタル広告仲介事業に対するニーズも増加することになる。このことから、各コンテンツ事業とデジタル広告事業及び特定デジタル広告仲介事業との間には、間接ネットワーク効果が働いているといえる。

出典:Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について(公正取引委員会:2020年8月4日配信)

まずおさらいとして、「間接ネットワーク効果」という言葉の意味を振り返っておきましょう。間接ネットワーク効果とは私の記事でもよくお伝えしている「ネットワーク外部性」を「直接的か」「間接的か」で分けたうちの一方のことを指し、ネットワーク外部性の一部に該当します。「間接」としている理由は、「製品やサービスが増えるごとに、それらに付随した製品やサービスも増え、結果として価値が上がっていく」というように、1つの製品の成長が他の製品の成長に寄与し、それが結果的に跳ね返ってくるという構造になっているからです。具体例でいうと、スマートフォンとアプリの関係が分かりやすいかと思います。

本題に戻ると、ヤフーとLINEは様々なコンテンツを持つコングロマリット型のサービス提供者のため、間接ネットワーク効果がより強力に働くことで、実質的に広告主を独占的に囲い込むことができるのでは?という懸念が上がっていました。

しかし、最終的には「独占の恐れはない」という判断に落ち着いています。理由は、以下のように公表されています。

有力な競争事業者が有するデジタル広告事業及び特定デジタル広告仲介事業以外のサービス(動画共有サイト、SNSサイト、写真投稿サイト等)は、いずれも、当事会社グループの有するコンテンツ配信事業と同様に、デジタル広告事業及び特定デジタル広告仲介事業に対する間接ネットワーク効果が働く有力なサービスであると考えられる。そのため、少なくとも、当事会社グループの有する各コンテンツ配信事業が統合された場合に生ずる間接ネットワーク効果が、これら競争事業者の提供する有力なサービスが有する間接ネットワーク効果を凌駕するほどに強い間接ネットワーク効果を有するものであると判断すべき材料はない。

出典:Zホールディングス株式会社及びLINE株式会社の経営統合に関する審査結果について(公正取引委員会:2020年8月4日配信)

ポイントは、「これら競争事業者の提供する有力なサービスが有する間接ネットワーク効果を凌駕するほどに強い間接ネットワーク効果を有するものであると判断すべき材料はない」という点です。

要するに、ヤフーとLINEが統合したとしても、すでに存在しているYouTubeやFacebook、Twitterと比較して、特段有利にはならないという判断がされたということです。

Next: 統合すれば「コード決済」シェアは60%超え。それでも承認?

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