■決算概要
1. 2026年3月期中間期の業績概要
クラボウ<3106>の2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比3.6%減の69,245百万円、営業利益が同7.3%減の3,929百万円、経常利益が同5.0%減の4,843百万円、親会社株主に帰属する中間純利益(以下、中間純利益)が同87.5%増の6,421百万円と減収減益(中間純利益を除く)となったが、計画を上回る利益水準を確保した。
売上高は、AI用途以外の半導体市場の低迷により高機能樹脂製品が減速し、「化成品事業」が減収となった。また、構造改革を進める「繊維事業」についてもカジュアル部門の苦戦により落ち込んだ。ただ、両事業ともに想定の範囲内である。一方、「環境メカトロニクス事業」は、FA設備、鉄道業界向け検査装置、ウエハー洗浄装置等が順調に伸びた。また、「食品・サービス事業」及び「不動産事業」は総じて堅調に推移した。
利益面でも「化成品事業」における高機能樹脂製品の減速、並びに「繊維事業」での構造改革費用などにより減益となった。もっとも、「環境メカトロニクス事業」の伸びや「食品・サービス事業」及び「不動産事業」の底上げにより、計画を大きく上回る利益水準を確保することができた。また、中間純利益が大幅な増益となったのは、政策保有株式の売却益(43億円)の計上によるものである。
キャッシュ・フローの状況については、運転資本の減少により営業キャッシュ・フローが大きくプラス(9,028百万円)となった。投資キャッシュ・フローは政策保有株式の売却(プラス)と設備投資等(マイナス)がほぼ均衡し、若干マイナス(-352百万円)となった。財務キャッシュ・フローは自己株式取得及び配当金の支払いにより大きくマイナス(-8,735百万円)となった。以上から、現金及び現金同等物の残高は前期末比181百万円減の14,977百万円となった。
財政状態について特筆すべき変動はなく、総資産は前期末比0.2%減の190,193百万円と横ばいで推移した。なお、政策保有株式の売却を進めたにもかかわらず、「投資有価証券」が増加したのは、株価上昇の影響(簿価の洗い替え)によるものである。一方、自己資本については、株価上昇に伴う「その他有価証券評価差額金」(投資有価証券含み益)の拡大や利益準備金の積み増しが、社外流出(自己株式取得及び配当金の支払い)を上回り、前期末比3.8%増の124,396百万円に増加した。その結果、自己資本比率は65.4%(前期末は62.9%)に若干上昇した。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 化成品事業
売上高は前年同期比8.4%減の29,869百万円、セグメント利益は同32.4%減の1,564百万円と減収減益となった。売上高は、AI用途以外の半導体市場の低迷により「高機能樹脂製品」が減速したが、その点は想定内である。一方、「機能フィルム」は太陽電池向けが堅調に推移したほか、半導体製造関連領域(AI向け半導体等)での採用も着実に増えつつある(詳細は後述)。「産業マテリアル」は自動車内装向け軟質ウレタン、自動車フィルター向け不織布や断熱材の受注が順調に伸びた。利益面でも減収に伴う収益の押し下げにより減益となった。「産業マテリアル」の構造改革や生産性改善に取り組んだものの、収益性の高い「高機能樹脂製品」の落ち込みによりセグメント利益率は5.2%(前年同期は7.1%)に低下した。
(2) 繊維事業
売上高は前年同期比6.4%減の22,131百万円、セグメント損失は524百万円(前年同期は35百万円の利益)と減収減益となった。売上高は、原料改質技術を活用した高機能コットン糸「NaTech」(ネイテック)などの差別化原糸を中心に「糸」が堅調に推移したものの、「カジュアル」が大口顧客からの受注減により国内外ともに苦戦した。また、「ユニフォーム」は、「Smartfit(スマートフィット)」が大口案件のはく落により一旦調整されたものの、ユニフォームアパレル向け製品が伸びた。利益面では、減収による収益の押し下げに加え、一時的な構造改革費用(安城工場の閉鎖に伴う費用)の発生により大幅な減益(セグメント損失の計上)となった。なお、安城工場閉鎖については7月末に完了済である。
(3) 環境メカトロニクス事業
売上高は前年同期比13.3%増の10,044百万円、セグメント利益は同73.9%増の1,830百万円と増収増益となった。売上高は、半導体製造関連領域に向けた液体成分濃度計やウエハー・フィルター洗浄装置などの商材が堅調に推移し、「エレクトロニクス」「エンジニアリング」の業績を押し上げた。また、「ライフサイエンス・テクノロジー」は関税の影響を受けた攪拌脱泡装置の北米向け輸出減やロボットビジョンの拡販の遅れを子会社FA設備の受注増でカバーした。利益面でも、増収による収益の押し上げに加え、利益率の高い案件が寄与し大幅な増益となり、セグメント利益率は18.2%(前年同期は11.9%)と大きく改善した。
(4) 食品・サービス事業
売上高は前年同期比7.3%増の5,230百万円、セグメント利益は同70.0%増の369百万円と増収増益となった。売上高は、「食品」及び「サービス」ともに好調に推移した。「食品」は即席麺具材の拡販が順調であったほか、スープも新商品の採用や新規顧客開拓が進んだ。「サービス」はホテル関連が旺盛なインバウンド需要を背景に宿泊、レストランが順調に伸びたほか、宴会需要も回復傾向をたどった。利益面でも増収に伴う固定費軽減効果により、セグメント利益率は7.1%(前年同期は4.5%)に改善した。
(5) 不動産事業
売上高は前年同期比5.9%増の1,971百万円、セグメント利益は同5.0%増の1,245百万円と増収増益となった。賃貸物件の新規開店が業績の底上げに寄与した。セグメント利益率も63.2%(前年同期は63.7%)と高い水準を維持した。
2. 2026年3月期中間期の総括
2026年3月期中間期は減収減益となったものの、業績が一旦踊り場を迎えた背景には半導体市場の循環的な動き(回復の遅れ)や戦略的な取り組み(構造改革費用)が大きく影響しており、同社の潜在的な成長性や収益性の低下を示すものでない。一方、製品群によって多少のバラツキはあるものの、各事業が予想比に対して堅調に推移し、計画を上回る利益を積み上げたところは、同社の複合的な収益構造の強さをあらためて確認することができたと言える。また、活動面では、安城工場の閉鎖を完了した一方で、熊本イノベーションセンターの本格稼働が開始されるなど、事業ポートフォリオ改革やサプライチェーンの再構築に向けて特筆すべき成果を示すことができた。また、半導体市場の低迷が長引くなかでも、成長性が期待できるAI向け半導体製造工程(後工程)において、同社の機能フィルムが高度な要求性能に対応しながら着実な深耕を図っているところや、半導体フォトレジスト工程に対して、同社独自の原料改質技術を生かした金属イオン除去フィルターの増産体制を整えたところについても、今後に向けてプラスの材料と評価することができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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