■事業概要
1. Kaizen Platform<4170>の事業概要
国内のDX投資市場では多くの企業がDXを通じて業績拡大を模索しているが、特に大企業の顧客接点におけるDX実行には3つのIT基盤の壁がある。第1に、サービスごとにシステムが分断されていることに起因する「SaaS/ASP起点の技術的負債」である。第2に、社内に設計人材が不足しているため全体最適が図れず、調達コストが増大し続ける「SIer依存起点の技術的負債」が挙げられる。そして第3に、新規サービスへの投資は優先される一方で、リファクタリングや基盤刷新といった「守りのIT投資」の優先度が低迷しがちであるという課題である。昨今の生成AIの普及は、これら人員不足に起因するボトルネックを解消し、顧客体験と業務プロセスを接続して売上や生産性を高める転換点となっている。
こうした状況に対し、同社はAIをビジネス現場に統合するAIインテグレーターとして、企業のKPI改善に伴走する「顧客体験DX」を提供し、ROIの向上を実現している。依頼窓口となるシステム部門だけではなく、現場のビジネス部門がDXによるKPI改善を体験することが必要という同社の考え方に基づき、コンサルティング・開発・クリエイティブ制作・マーケティングまでを網羅し、あらゆる課題に同社グループで対応できるワンストップの支援体制を構築している。具体的には、Webサイト等のクリエイティブ制作に強みを持つ子会社ディーゼロと、プロジェクトマネジメント(PM)人材やエンジニア、デザイナーなどを企業に提案するKaizen Tech Agentによるサービスを組み合わせることで、顧客の課題に応じた最適なチーム組成を可能にしている。
生成AI活用のアプリ群の提供を通じてユーザー接点における摩擦を解消
2. 生成AIを活用したセミオーダー型UXアプリ群「Magical UX」
同社は、デジタル接点における顧客体験の高度化ニーズの高まりを背景に、生成AIを活用して顧客企業のUXを高度化するセミオーダー型UXアプリ群「Magical UX」を戦略コンセプトとして掲げている。「Magical UX」は、AIエージェントによるフォームアシスト、多言語対応、スマート検索、音声予約など成果に直結するUX機能を、顧客企業ごとのニーズやKPIに応じて最適な形でカスタマイズ開発し提供するものである。従来の個別領域ごとのKPI改善にとどまらず、顧客体験と業務プロセスを横断的に再設計することにより、企業収益の最大化を目指す枠組みである。
同社はこの戦略に先立ち、生成AIを活用した新サービスの開発を段階的に進めてきた。2024年3月には生成AIを活用したUX改善メニュー「Kaizen AI-UX」の提供を開始し、2025年1月には生成AI活用専門チーム「KAIZEN AI STUDIO」を設立、同年2月には課題の発見から解決プランの検証までをワンストップで支援する生成AIワークショップ及びプロトタイプ開発パッケージの提供を開始した。また、UX改善の技術基盤である「KAIZEN ENGINE」についても継続的なアップデートを実施している。
さらに2025年4月には、新たな成長戦略の一環として従来の個別ソリューション群(UX・CRM・集客・コンサル・開発/SES等)を再編し、生成AI主導のサービスラインナップへ全面的に刷新した。加えて、従来のプロジェクトごとの月額定額契約のほか、フォーム改善やLINEを活用したCRM施策など成果が比較的安定的に見込める領域において、初期投資リスクを抑えながらROIを志向する成果報酬型プランの提供を開始している。
「Magical UX」の具体的な実装を支えるのが、顧客企業ごとにカスタマイズされたPaaS/API基盤のマネージドクラウド「Kaizen Cloud Service」である。「Kaizen Cloud Service」は、タグを挿入するだけで既存システムと接続する「KAIZEN ENGINE」と、最新の生成AI群を統合管理する「Kaizen AI Cloud」で構成される。これにより、既存システム(レガシーシステム)を大規模改修することなく、後付けで最新のAI機能を実装できる「Magical UX」の提供を可能にしている。また、専門家集団による伴走支援サービス「Professional Solution」として、コンサルティング、開発/SES、クリエイティブ制作、マーケティングまでを一貫して提供する体制を構築している。AI技術と専門人材を組み合わせることで、単なるツール導入にとどまらないトータルなDX支援を実現するモデルとなっている。
生成AIを活用したUXアプリ群の具体例としては、2025年6月にフォーム入力支援AIエージェント「Kaizen Conversion Agent」、パーソナライズAIエージェント「Kaizen Personalize Agent」をリリースした。「Kaizen Conversion Agent」は名刺・履歴書・車検証などの画像やPDF、URLを生成AIが解析し、入力フォームへの自動転記を行うことでユーザーの入力負担軽減を図る。「Kaizen Personalize Agent」はユーザーの検索条件を保存し、データベース更新を検知して最適なタイミングでLINEへ通知することで、個人に最適化された情報提供を可能にする。さらに2025年12月には、人材紹介サービス「Kaizen AIX Agent」の提供を開始した。企業の生成AI活用を推進するハイクラス人材の紹介を通じて戦略立案から実行までの体制構築を支援するものであり、プロダクト提供を補完する人的側面からのAI変革支援として位置付けられる。
これらのアプリ群は既存の「KAIZEN ENGINE」と連携し、将来的には自律型のUX改善ワークフローの実現を目指す構想である。2026年2月には、エン<4849>が運営する「ミドルの転職」において「Kaizen Conversion Agent」を活用した実証実験を開始しており、Web履歴書登録体験の向上を図っている。以上のように、「Magical UX」は生成AIを活用したUXアプリ群の総称であると同時に、クラウド基盤と専門人材の伴走支援を組み合わせることで、既存システムを大規模改修することなく継続的なUX改善を可能にする統合モデルである。同社における生成AI戦略の中核を担うとともに、クラウド収益拡大と高付加価値化を支える成長ドライバーとして位置付けられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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