今回はドーミーインで有名な共立メンテナンス<9616>を取り上げます。3月に3,624円をつけた後、8月5日の日本株大幅下落も受けて下落し、24年8月16日現在は2,360円です。投資するべきなのか、事業の内容を見て考えていきます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)
プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。
共立メンテナンスの事業内容は?
共立メンテナンスは、多角的な事業展開を特徴とする企業です。主な事業セグメントは以下の通りです。
- 寮事業:学生寮・社員寮「ドーミー」、寮・食堂受託、ワンルームタイプマンション「ドミール」、シェアハウス「シェアハウスドーミー」の運営を行っています。
- ホテル事業:ビジネスホテル「ドーミーイン」「御宿 野乃」、リゾートホテル「ラビスタ」「ルシアン」、湯宿「和の湯宿」を展開しています。
- 総合ビルマネジメント事業:オフィスビルやレジデンスビルの管理運営を行っています。
- フーズ事業:外食事業、受託給食事業、ホテルレストラン等の受託運営を手がけています。
- デベロップメント事業:建設・企画・設計・仲介、分譲マンション事業、不動産流動化事業などを行っています。
事業ごとの利益推移を見ていると、不動産賃貸業と似ている特性を持った寮事業の安定感が目立ちます。そして近年の成長は、ホテル事業の成長によるものであるとわかります。
出典:SPEEDAより作成
このホテル事業の強みを考えていきます。
寮事業から発展したホテル事業の強み
共立メンテナンスのホテル事業、特に「ドーミーイン」ブランドの強みは、長年にわたる寮事業で培ったノウハウを巧みに活用している点にあります。この独自のアプローチは、1994年に埼玉県草加市谷塚駅の近くにオープンした「ドーミーイン」1号店での経験を経て、その後の浅草店開発プロジェクトを機に確立されました。
「寮のようなアットホームなおもてなし」というコンセプトは、ビジネスホテルの常識を覆すものでした。寮生活で重要な役割を果たす「お風呂」の概念を発展させ、多くのドーミーインで大浴場やサウナを完備したのです。当時、ビジネスホテルに大浴場を設置するところはほとんどなく、このコスト度外視の斬新なアイデアが、その後のドーミーインのブランド確立に大きく貢献しました。
さらに、寮の食堂運営で培った経験を活かし、朝食を中心に質の高い食事を提供しています。地域の特色を活かした朝食は、宿泊客からの高い評価を得ており、リピーター獲得の大きな要因となっています。
これらのサービスは、単なる「寝る場所」としてのホテルではなく、くつろぎやリラックスの場を提供するという、共立メンテナンスの理念を体現しています。寮生活をサポートする中で培った、個々のニーズに応じたきめ細やかなサービスは、ホテルでも実践され、ビジネス客や観光客に「第二の我が家」のような安らぎを提供しているのです。
オリコンに寄せられた「ドーミーイン 利用者の声」からも、サービスの質に満足している様子がわかります。
出典:オリコン
この独自のアプローチにより、ドーミーインは高い稼働率を実現しています。業界平均稼働率が75%前後のところ、同ホテルでは90%前後の稼働率を実現しています。
次は競合ホテルのアパホテルや東横インと比較してみましょう