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株価3割下落「ドーミーイン」共立メンテは買い?アパホテルや東横インに勝てるか?長期投資家が注視すべき成長戦略=佐々木悠

今後の成長戦略をどう評価する?

共立メンテナンスの人手不足問題と成長戦略について、現状分析、対策、そして評価を踏まえて詳しく説明いたします。

<現状>

共立メンテナンスは、寮事業とホテル事業を中心に多角的な事業展開を行っており、特にドーミーインブランドで展開するホテル事業が成長を牽引しています。しかし、現在の日本のホテル業界全体が直面している大きな課題として、人手不足問題があります。これは需要の増加に対して、働き手の不足によるホテル供給量の制限をもたらしています。

共立メンテナンスの場合、ホテル内に温泉や質の高い食事といった付加価値を提供することで差別化を図っているため、この人手不足問題は特に重要です。転職口コミを見ると、内部では派遣バイトの活用などで対応しているようですが、根本的な解決には至っていません。

また、インバウンド需要の急速な回復や「ホテル不足」による宿泊単価の上昇など、ホテル業界全体にとっての追い風も存在します。2024年6月の訪日外国人旅行者数は2019年比8.9%増の313万5600人を記録し、単月で過去最高を更新しました。

<対策>

共立メンテナンスの中期経営計画「KYORITSU Growth Vision Rise Up Plan 2028」を見ると、以下のような対策が計画されています。

1.新規開発による室数の増加:現在約65,000室から75,000室への増設計画。

2.活用による労働生産性の向上(人手不足への対応)

  • ホテルスマートチェックインおよび自動精算機の導入
  • 清掃及び配膳ロボットの活用
  • RPA活用やペーパーレス化による省力化

3.人材戦略

  • 研修制度及び人事制度の拡充・見直し
  • 多様な雇用形態及び勤務形態の新設
  • 採用チャネルの拡充

4.インバウンド需要の取り込み:ドーミーイン事業でのインバウンド比率目標30%超

5.積極的な投資:5年総額2,000億円の投資計画(新規事業所開業、大規模リニューアル、DX投資)

これらによって23年から5年間にかけての売上の平均成長率10%、営業利益率の平均成長率30%を目標としています。

<評価>

共立メンテナンスの対策は、人手不足問題と成長戦略の両面において、一定の効果が期待できると評価できます。

なぜならば、DX活用による労働生産性向上の取り組みは、人手不足問題に対する有効な解決策となり得るからです。特に、スマートチェックインや自動精算機の導入は、顧客満足度を損なうことなく業務効率化を図れる点で評価できます。

そしてインバウンド需要の積極的な取り込みは、日本の観光業の回復と成長に合わせた戦略として適切です。ただし、競合他社が多言語対応などを進める中、やや具体性が欠ける印象もあります。成功すれば大きな成長ドライバーとなる可能性がありますが、成功可能性は不透明です。

そして、気になるところはドーミーイン以外の「リゾートホテル」への投資です。ドーミーインに比べると収益性は高くありませんが、中期経営計画では大きな成長を目指しています。(下グラフ、薄青部分)

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出典:決算説明資料より作成

共立メンテナンスのここまでの成功要因は、従来素泊まりが当たり前だったビジネスホテルに、温泉や美味しい食事といった付加価値をつけたことでした。しかし、あらかじめ高いサービスを期待されるリゾートホテルの成功には、また違った成功要因が必要だと考えます。

それは星野リゾートに代表されるブランドイメージや、業界最高クラスのサービス、さらに立地なども関わってくるでしょう。ビジネスホテルのイメージが強い共立メンテナンスがどのようにリゾートホテルを成長させるのか、この分野での成長戦略の詳細や、ブランド構築の方針などが明確でない点は懸念材料です。

総合的に見て、共立メンテナンスの戦略は人手不足問題に対応しつつ、成長機会を捉えようとする包括的なものであると評価できます。ただしインバウンド対応リゾートホテルへの戦略に対する具体性はやや弱いと感じます。この成長戦略に対する認識と企業の強み・株価の割安性をどう評価するかが投資のポイントになりそうです。


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image by:Phuong D. Nguyen / Shutterstock.com
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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年8月16日号)より※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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