イラン戦争によって、非産油途上国経済が危機に陥っています。戦争の長期化で原油価格の高止まりにとどまらず、石油が入らなくなって経済が機能不全に陥る国が増えています。それにとどまらず、世界的なインフレ懸念でドル金利も上昇し、産油国米国に資金が集まり、ドル高となっていることから、ドル債務を抱える途上国の負担が高まっています。
悪いことに、かつての石油ショック時にはIMFなどの国際機関と米国がこれらに支援の手を差し伸べましたが、今はトランプのおかげで国際機関が機能不全になり、トランプの米国はむしろキューバなど反米の国にはこの危機を利用して国家破綻に導こうとしています。このままでは途上国の債務危機が広がります。誰が非産油途上国を救済するのでしょうか。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2026年4月3日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
深刻化する途上国の経済
中東を舞台とした戦争が続く中で、石油の供給制約の影響が各地で確認されるようになりました。先進国の中でも産油国と非産油国とで大きな差が見られますが、アジア諸国や非産油途上国では経済の混乱がすでに生じています。フィリピンではバス会社の運転手が燃料高で商売できないとストライキをうち、日本が軽油を提供しています。そしてベトナムも日本に石油備蓄の支援を求めています。
キューバでは石油不足で経済がすでに危機に陥っていますが、トランプの米国はこれを突き放し、「ベネズエラの次はキューバだ」と破綻に追い込もうとしています。これをロシアが石油を供給することになりました。石油の備蓄は日本が275日あった一方で、多くの途上国は1か月分あるかどうかの瀬戸際にあります。このまま石油の供給が止まれば、途上国の経済は機能不全に陥ります。
中東以外ではカザフスタンなど中央アジアにも産油国はありますが、量的には限られた石油資源で、しかもカネのある先進国が確保しようとしているだけに、途上国には厳しい環境にあります。特に近年は親米国家と反米国家に分断が広がり、反米国家はトランプに睨まれて特に厳しい環境にあります。国際機関による石油備蓄から、こうした途上国に配分するしかありませんが、それにも限度があります。
債務危機が追い打ち
「油断」による経済の機能不全にとどまらず、非産油途上国ではその債務負担が厳しくなっています。24年には途上国の債務返済が進んだのですが、このところ原油の供給に制約が強まり、経済が機能不全に陥れば返済原資の調達にも事欠きます。しかも、途上国の多くはドル建ての債務を抱えていて、その金利が上昇しているうえに、このところまたドル高になっているため、自国通貨での返済額が大きくなります。
世銀によると、24年末の中低所得国の対外債務は8兆9,000億ドルにのぼります。その利払い額は年間4,200億ドルにのぼります。債務の再編額は600億ドルにとどまり、途上国の債務返済、利払い負担が経済を圧迫していますが、今後ドル高、金利高が進むと、石油の調達問題とともに債務返済が大きな負担となります。
IMFが機能しない
これまでは石油ショックなどの際には、IMF(国際通貨基金)などの国際機関が途上国の債務支援を行い、さらに米国財務省が救済に乗り出すケースもあったのですが、第二次トランプ政権になって状況が一変しました。トランプの米国は米国第一主義、「ドンロー主義」を打ち出し、他の国にかまっていられないとの姿勢に変わりました。
実際、米国は各種国連機関から脱退し、あるいは資金の拠出を大幅に減らしているため、国際機関が機能不全に陥っています。しかも、米国が進んで他国の救済に出ることはまずなくなりました。むしろ危機を利用して反米の国を弱体化させ、懲らしめる姿勢になっています。米国の裏庭のようなキューバに対しても、反米の姿勢を見せたために見放しています。
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