2026年6月12日にナスダックへ上場したスペースX(SPCX)は、わずか3営業日で201ドルまで急騰した後、8月には108ドル台まで半減しました。xAI吸収に伴う巨額の研究開発費への懸念に加え、早期ロックアップ解除条項の発動警戒が売りを呼び込んだためです。メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』では、著者の房広治さんが、この乱高下の背景と、キャシー・ウッドの強気予想に乗って失望する投資家が絶えない理由を解き明かし、来年初めに控える本命のロックアップ解除への備え方を示します。(『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』房広治)
プロフィール:房広治(ふさ・こうじ)
実業家・投資家。GVE株式会社CEO。オックスフォード大学小児学部戦略アドバイザー。デジタル通貨、サイバーセキュリティ、量子コンピュータなどの分野において、世界的なネットワークを持ち、テクノロジーと金融の融合領域で活動。「長期シナリオ思考」を軸に、世界の構造変化を読み解く独自の視点に定評がある。
※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2026年8月配信号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
宇宙から叩き落とされた投資家たち:SpaceX(SPCX)狂想曲と、誰もが一度は通る『キャシー・ウッドの洗礼』
補足解説:なぜ上場数ヶ月で「ロックアップ解除」が話題になるのか?
「6ヶ月後(2027年1月初め)」が本命の全解禁であることは間違いありません。しかし、近年のハイテク・IPO(特にイーロン・マスク関連や話題のユニコーン企業)では、以下のような変則ルールが適用されるケースが増えています。
早期解除条項(Early Release)の存在
・「株価が公募価格の120%~130%以上を◯日間維持した場合、一部(20~30%程度)のロックアップを早期解除する」という条項が組み込まれていることがあります。
・上場直後に200ドルまで急騰したことで「早期解禁の条件を満たしてしまう=早期の売り圧力が来る」と警戒された側面があります。
「噂で売り、事実で買え」の市場心理
・「半年後に膨大な売りが降ってくる」という恐怖自体が、上場直後(6~8月)のボラティリティを増幅させます。
SpaceX(SPCX)上場以来の乱高下:ロケット級の急発進と急降下
2026年6月12日、米ナスダック市場に超大型新人として彗星のごとく現れたスペースX(ティッカー:SPCX)。まずは上場からこれまでの怒涛の株価推移をおさらいしておこう。
・公募価格(6月12日): 135.00ドル(初値 150ドル)
・最高値(上場3日目・6月16日): 201.80ドル
・最安値(8月5日): 108.27ドル
(最高値からほぼ半減、公募価格すら割れ)
・足元の水準(8月中旬): 142ドル前後(公募価格をなんとか回復)
・「売りそびれた」個人投資家の悲劇と喜劇
上場直後、わずか3営業日で200ドルを突破した瞬間、誰もが「火星到達!」「イーロン・マスク万歳!」と歓喜していた。
しかし、そこで利益確定ボタンを押さずに「どこまで行くのか」とニヤニヤ眺めていた投資家を待っていたのは、大気圏再突入どころか「エンジン停止による垂直落下」であった。
xAI吸収に伴う莫大な研究開発費(月10億ドル規模の現金焼却)への懸念や、急騰による「早期ロックアップ解除条項」の発動警戒、そして「来年初め(IPO6ヶ月後)にやってくる本番のロックアップ解除による売り圧力」を先回りして嫌気した売りが殺到。株価は最高値のほぼ半値である108ドル台まで急降下した。「ロケットを買ったつもりが、ナイアガラの滝に乗っていた」状態である。
幸いにも8月の決算通過後は140ドル台まで生還したものの、200ドルの頂点で買い増した者や、売りそびれた者の胃に大きな穴を開けたことは間違いない。
キャシー・ウッドに失望した?:おめでとう、それが「グローバル標準」だ
今回のSpaceXフィーバーの中で、アーク・インベスト(ARK Invest)率いるキャシー・ウッド(Cathie Wood)の存在を初めて知り、その言動や運用の振る舞いに失望したとの個人投資家がいらっしゃる。
「キャシー・ウッドの強気予想に乗っかり、高値で掴んで失望する」というのは、この5年間で世界中の数百万人の個人投資家が経験してきた『投資家の伝統儀式』である。
これは決して、固有の悲劇ではない。安心してほしい(いや、安心している場合ではないが)。
なぜ、世界中の投資家が彼女に一度は失望するのか?
「ハイプ(熱狂)の頂点」で最も輝くスター
キャシー・ウッドは、イーロン・マスクすなわちAI、宇宙開発、ロボティクスといった「破壊的イノベーション」が大好物だ。市場がイノベーションに熱狂している局面では神がかったパフォーマンスを見せるが、熱狂が冷めると容赦なくファンド価格が暴落する。彼女を知るタイミングが「一番話題になっている時(=だいたい相場の天井)」になりがちなのが、最初の悲劇である。
独特すぎる「機械的リバランス」
アークのファンドは、株価が急上昇するとリスク管理のために機械的にその銘柄を売り、逆に暴落した銘柄を買い増すルールを持つ。これが個人投資家の目には「なぜ上がっているSpaceXを売り、下がっている不人気株を買うのか!」「絶好のタイミングでハズレを引いている」と映り、激しい失望と不信感を生む。
「2030年の目標株価」と「明日の口座残高」の温度差
彼女は平然と「SpaceXの将来価値は〇兆ドル、株価は〇千ドルになる」といった超・強気シナリオを語る。これは、プロの投資家から見れば、占い師と同じようにしか見れない。自分がポートフォリオとして持っているものは、買いだと言っているようにしか見えない。我田引水甚だしいのだ。
5~10年単位のビジョンと、目の前の暴落(200ドル→108ドル)のギャップに耐えきれず、初見の投資家は彼女が占い師と同じことに気づき、脱落していくのである。
本日の分析まとめと投資の処方箋
SpaceX株の乱高下と、キャシー・ウッド初体験から得られる教訓を3点にまとめたい。
・来年初めの「本命ロックアップ解除(6ヶ月後)」に備える
VCや創業メンバーなどのインサイダーが保有する大部分の株が解禁されるのは上場6ヶ月後(2027年1月初め頃)である。ここを通過するまでは一時的な需給の悪化が予想されるため、「売りそびれた」と嘆くより、次の需給イベントを把握しておくことが重要。
・名物ファンドマネージャーとの距離感
キャシー・ウッドは本当の意味での「預言者」ではなく、「占い師」程度しか言っていることを信じてはいけない。「特定テーマ、自分のポートフォリオに極振りしたハイリスク・アクティブマネージャー」に過ぎない。彼女のレポートや発言は「エンタメ&リサーチ資料」として読み、実際の売り買いは自分のリサーチ、リスク許容度で行うのが鉄則。
・宇宙株を保有するということ
SpaceXは従来の航空宇宙企業ではなく、Starlinkによるデータインフラ企業であり、AI計算基盤(旧xAI)を抱えるハイブリッド怪物である。ボラティリティ(価格変動)は今後もジェットコースター並みになる。胃薬を用意するか、アプリを消して数年放置する覚悟が必要。
本格的なロックアップ解除(6ヶ月後)というプロの視点をお持ちの読者の皆様。市場の短期的なパニックに惑わされず、イベントのタイムスケジュールを冷静に把握できている時点で、空売りを踏まえて考えれば、来年初めにSpaceXで儲けることができるチャンスが来るかもしれない。
image by:FotoField / Shutterstock.com
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世界の金融市場・投資業界で活躍する日本人投資家、房広治による、ブログには書けないお金儲けの話や資本市場に通用するビジネスマン・社長のあるべき姿などを、余すことなく書きます。