NY在住日本人社長が「もう日本に住めない」と思った車内注意書き

 

前述のこっちのホテルで働いていた知り合いの彼は、肝心なところで間違えている。確かに、最初はクレームを発生しないためのマニュアルからスタートしても、サービス業をやっていくうち、「ちょっとでも、うるせえ客を快適にしてやろっかな」と思う人間はアメリカより、日本の方が多いような気がします。あくまで僕個人の肌感覚だけど。

それに、フレンドリーに接して、結果、何もしないサービス業のニューヨーカーに僕は腐るほど遭遇してきました。それって、結局、フレンドリーじゃなくない?もっというなら、フレンドリーはいいから、もちょと、ちゃんとサービスしてくれよ、と思うことの方が多い。

なにより「フレンドリーに、友達のように、家族のように接しましょう」っていうマニュアルを実践してるだけと言えなくもない。日本のサービスがクレームを発生させない為という理由から発生したのが事実でも、そんなこというなら、アメリカのサービスはチップを少しでも多くもらう為から発生してないか。しかも、フレンドリーな顔を被ったぶん、いやらしい。

確かに彼の言うように最初は「マニュアル」からスタートしているのが、日本の多くの企業サービスではあると思います。それでも、その中で働く多くの人は、日常の業務をやっていくうちに、そのマニュアルから少しでも脱出しようとしているように僕には見える。日本人の習性かもしれない。

フレンドリーなホスピタリティーからスタートしたアメリカのサービスは、日常に追われるうち、フレンドリーな雰囲気のマニュアルになってしまったのではないかとすら思えるのです。もちろん人によるけど。

僕が今まで宿泊した、日本の著名なホテルは、帝国にしても、椿山荘にしても、ニューオータニにしても、さくらタワーにしても、スタッフのみなさんはマニュアルだけなんかじゃなかった。風邪で寝込んだ時は、心配して部屋まで薬を届けてくれ、タクシーで病院まで連れて行ってくれ、年老いた田舎の親父を呼び寄せた時は、駅までお迎えに上がりましょうか、と提案してくれ、忘れ物した時は無償でニューヨークまで郵送してくれた。そんな一連のイレギュラーな場合のマニュアルなんて、絶対にない

今回の滞在で、あくまで僕個人の中では、ひとつの答えが出たと思います。今まで多くの方に、聞かれた「日本とアメリカどっちが好きですか」という質問。「わかんないです。どっちも好きで、どっちも嫌い。でも、サービス業のポスピタリティーと言われるおもてなしの精神は、日本の方が100倍進んでます」と答えます。アメリカ在住の見識者が「いや、それは違う!」と言ったところで、僕個人への質問に、僕個人がどう感じたかなんて、僕個人が決める。

「AとBの料理どっちが美味しいですか?」と聞かれたら、美味しいと思う方を答える。「B」と答える僕に「いやぁ、それは違うよ、Bの方が一見、美味しく感じるだけで、レシピ通り作っただけで、実はAの方が、荒削りに見えても、素材を活かして、食べ物本来の味を大切に、どーのこーの」と言われても、余計なお世話だ。

舌がどう感じたか、僕がどう感じたか、誰より僕が知っている。だいたい、そんなうんちくを必要としている時点で、アウトだよ。消費者に、そんな歴史的背景をいちいち聞かせなきゃいけない接客って、そもそもどうなのだろう。消費者は、社会的背景を知っておく必要はない。僕は日本の「おもてなし」の精神がとても素晴らしいと思います。

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