宮城県仙台市に本社を置くアイリスオーヤマの2020年度決算速報が先日発表され、その内容の凄まじさに多くの驚きの声があがっている。
報道などによると、アイリスオーヤマを含む29社のグループ総売上高は、過去最高の6,900億円(前年比138%)、また経常利益は前年比で約2.2倍となる621億円となる見込み。また、アイリスオーヤマ単体での売上高は前期比36%増の2,185億円、経常利益は約2.4倍の270億円と、ともに大幅に伸ばす結果となった。
今年度は特に新型コロナ対策の関連アイテムが好調だったようで、宮城県の角田工場で作られる国産分も含めたマスクの国内販売額は、なんと200億円にのぼる結果に。この他にも、非接触で体温を測定するサーマルカメラ、部屋の換気に使うサーキュレーターなども大いに売れたという。
家電事業は約10年で急成長
いっぽう家電事業のほうもすこぶる好調のようで、その売上高は前期比32%増の1,250億円。こちらもコロナ禍による巣ごもり需要によって、テレビや除湿器、電気圧力鍋といった調理家電の販売が伸びた模様だ。さらにコロナ禍で言えば、テレワークが進んだことでシュレッダーや液晶モニター、デスクなども良く売れたという。
思い返せば、アイリスオーヤマが家電部門に力を入れ始めたのは2010年代の前半。当時は三洋電機がパナソニックの完全子会社となり、その後同社の白物家電部門がハイアールに売却されたり、さらに数年後にはシャープが外資系の傘下となったりと、日本の家電業界の枠組みが大きく変化し、人材の動きも流動的になっていた時期だ。
そんななかアイリスオーヤマは、2013年に大阪に開発拠点を作るなどして、先述のような大手家電メーカーの優秀な技術者を大量に採用し、さらに2017年にはエアコンなどといった大型白物家電にも参入するなど、総合家電メーカーとしての道へ。値頃感のある商品群が一定の支持を集め、本格参入からわずか10年ほどで、家電部門の売上はアイリスオーヤマ単体の売上の半分以上を占めるまでに。2010年の家電部門の売上が約100億円だったので、実に12倍の急成長となったわけだ。
今回の決算結果を受けて、SNS上では驚きの声が多くあがっているが、マスクなどコロナ関連商品の売上増加もさることながら、コスパが良くて他社にないアイデアの製品が多く揃う同社の家電製品の好調ぶりも寄与したのではという指摘も多い。
この規模でこの機動性、スゴイ…
→アイリスオーヤマが7日発表したグループ全体の2020年12月期決算は売上高が前の期比38%増の6900億円だった。経常利益は2.2倍の621億円で、ともに過去最高となった。
生産を増やしたマスクの販売が伸び、利益率が改善した。 https://t.co/kDse9Z3Q3B— Tsuyoshi Shimizu / 清水 剛 (@shimitsuyo111) January 7, 2021
私もコロナ期間中だけで総額10万円ほどアイリス製品購入しました
なんと言ってもコストパフォーマンスが素晴らしい
あと痒いところに手が届く、他社にない製品があるのがアイリスオーヤマです@irisplazaマスクだけで200億円! アイリス、売上高は過去最高の6900億円 https://t.co/NH64p1G8ZL
— Webマーくん@大学4回生 (@1start_markun) January 12, 2021
また、これだけ業績が好調となると当然出てくるのが「上場していたら株を買うのに」といった声。ただいっぽうで、なまじ上場をしてしまうと株主主体の運営となり、アイリスオーヤマの持つ商品開発のスピード感などが失われてしまうのではという見方もあり、「このまま非上場のほうがいい」との声も多い。
アイリスオーヤマの決算凄いな。株買おうかと思ったら上場してなかった
— クソ株 売れ売れ団 (@PlPFke9fS9c2r2N) January 8, 2021
アイリスオーヤマ良いですよね、機能はシンプルだけど、低価格でコスパが良い商品が多い印象です✨
私も上場したら買いたいー♡
国内の家電メーカーが多機能で便利な高級家電に力を入れてるんで、こういうシンプルでコスパの良い製品を出すメーカー有り難いです✨— はるぶー (@haruharu_buuuuu) January 11, 2021
もし上場とかいう話になったら大注目だけど、株主主体の運営にならないで欲しいから、このままのアイリスオーヤマが一番いいんだろな
— My海苔tea (@SukusukuMy) December 31, 2020
満を持してマスク販売を始めたパナソニック
このようにアイリスオーヤマがマスク販売や家電部門の好調による景気のいい決算で、ネット上の話題となるなか、家電業界の雄であるパナソニックはどうしているのかというと、何の因果か自社製マスクの販売を開始していた。
12日から同社のショッピングサイトにて発売されたマスクは、飛沫や微粒子を99%カットできるフィルターを採用した、国産材料の3層不織布のもの。これまでは社内や関係先向けに製造し、さらに各種スポーツ関連団体などに配っていたとのことだが、今回満を持して一般消費者向けにも販売することになったようだ。
信頼と安心のパナソニックブランド、さらには国内生産品ということで、欲しいという方はかなり多いようで、ネット上では「買えなかった」との声も多く見られる。
そういえば今日はパナマスクの発売日ですねとサイト覗いたら陥落してた。https://t.co/CK0jOOPNvV
— tethys (@tethys_seesaa) January 12, 2021
今日からパナソニックのマスクが発売になったので、購入に挑んでいるのだが、激混みのようで画面が進まないので、その時間で今までエントリーしてなかったシャープのマスク抽選申込をしておいた。
どちらが先に入手できるのかな~— Kiyan♪ (@shivakyn87) January 12, 2021
ただその反面で、1箱50枚入りで税込3,278円という価格に「高い」といった声も少なくない。お値段的には、同じく家電メーカーでマスクを販売しているシャープ製のものと全く同じなのだが、確かにマスクの供給も安定して来て久しい今となっては、少々強気な価格設定という気もしないでもない。また、マスクひとつひとつに刻まれたパナソニックのロゴに対し「これで客先には行けない」との声もあり、信頼と安心の証しが逆に仇となっているようだ。
パナマスク、未だにマスクをあの値段で買う人がいる事に大変驚いておりますw
— あやれん (@ayaren) January 12, 2021
さすがにパナの文字の入ったマスクで客先にはいけない…
誰かやる勇気のある猛者はいるのかね— ★J★ (@J_peach_H) January 11, 2021
くわえて、この段階でマスクを発売し始めることに関して「10ヶ月早かったらな」と、そのスピード感の無さに落胆する声も。さらには「アイリスオーヤマの後追い」という辛辣な意見も聞こえる。
このスピード感がパナソニックの真骨頂!格好いい❗
「50枚入り3278円で販売する。(略)国産材料を使っていることなどを踏まえて価格を設定した。下部に「Panasonic」と小さく刻印してある。」
いやぁたまんねえな https://t.co/P42VkHCDPu— ようしゅう (@you_shu1) January 12, 2021
これが、日本のメーカーのスピード感か
10ヶ月早かったらなパナソニック、マスク発売。国内自社クリーンルームで生産 #SmartNews https://t.co/9fIagxyBp1
— あっかんべぇだぁ〜@ This is the way! (@Akkanvader) January 7, 2021
パナソニックも自社製マスク発売 通販サイトで12日から https://t.co/stRef02b1e @SankeiBiz_jpより
パナソニックもマスクを製造販売するのか。とうとうシャープやアイリスオーヤマの後追いまでする会社に落ちぶれてしまったか。いつまでも「マネ下電産」のまま。— kkzkj (@kkzkj) January 7, 2021
パナソニックが今後マスク生産に本腰を入れていくかは不明だが、家電市場と同様に奇しくも競合する形となった両社。ここ数年は停滞ぶりが頻繁に指摘されるパナソニックだけに、右肩上がりで業績を上げ、2年後には売上1兆円超えを目指すアイリスオーヤマの存在は、大いに刺激となっているはずだろう。
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