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アメリカ「復興」の嘘。報道されぬ分断と暴力、バイデン政権への不満がこの夏爆発する=高島康司

高いインフレ率

彼らの証言からは、ワクチン接種の拡大で社会的行動規制が撤廃され、好景気のなかで夏を謳歌するアメリカ人という、日本で見るイメージとはまったく異なった状況がアメリカにはあることを教えてくれる。

そこで、アメリカ国内のインフレ率と犯罪率を改めて調べて見ると、予想以上に深刻な状況であることが分かった。

米労働局発表の公式統計では、今年6月までの1年間の消費者物価指数は5.4%上昇している。これは、中古車やトラックの価格が急激に上昇したことが原因さとされている。中古車価格は、半導体の供給不足による自動車生産の低下で高騰しており、6月には10.5%も上昇した。

また「全米不動産業者協会」によると、全米182都市で中古住宅価格は平均で16%上昇している。さらに賃貸料も上昇が続いており、ホテルの室料は旅行需要の急速な回復に伴い、前月比7.9%増と大幅に上昇した。

日本の同時期の消費者物価指数はマイナス0.1%なので、プラス5.4%と聞くと相当に高い印象を受けるが、それでも物価が短期間で2倍や3倍になるハイパーインフレのような状態とは根本的に異なる。まだ十分に耐えられる水準であるような感じだ。

しかし、アメリカのインフレは地域によって、また物品によって大きな違いがあるので、国民の生活実感は居住しているエリアによって相当に異なるようだ。試みに、様々な記事を参照すると、生活実感としてのインフレがどのようなものなのかが分かる。

「CBS」の調査によると、全米平均で今年は住宅価格が急激に上昇したため、「家を買うには悪い時期」と答えたアメリカ人の割合が過去最高になった。家を買うには悪い時期」と答えた人の割合は、過去3ヵ月間で記録的に急増し、6月には64%に達したのだ。消費者は住宅価格を主な理由として挙げている。

一方、「今はまだ住宅購入に適した時期である」と答えた人は過去最低の32%で、「わからない」と答えた人の割合は4%に低下した。

また、西海岸など住宅価格の上昇が特に激しい地域もある。現在、ワシントン州東部、オレゴン州東部、アイダホ州、モンタナ州の農村部、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州の農村部や郊外では特に上昇が著しい。

例えばワシントン州のスポケーン郡では、1週間に販売される約200件の住宅のうち、30万ドル以下の価格で販売されているのは、わずか5件ほどだった。スポケーン郡は農村地域である。所得は決して高いわけではない。2015年には、スポケーン郡の平均的な住宅価格は17万900ドルだった。2021年にはほぼ2倍になっている。

高い犯罪率

このようにアメリカの住宅価格の高騰は、特に田舎と思われる大都市圏の郊外や、農村地域で進んでいる。それがこのような地域に住む人々の生活を圧迫している。なぜこのような田舎の住宅価格が高騰しているのだろうか?

実はその理由は、大都市圏の犯罪率の急上昇なのだ。「ニューヨーク・タイムズ紙」によると、アメリカの大都市における殺人事件の発生率は、2020年に平均30%上昇し、2021年にはさらに24%上昇している。 このような短期間での急増は、アメリカ史上前例がない。

その代表的な例はサンフランシスコだ。サンフランシスコでは車上荒らしが急増しており、市内の一部の地域では700%以上も増加しているという。郡や州の規制が解除されて観光客が増えたため、窃盗団が観光客に便乗してレンタカーに侵入している。またサンフランシスコは、ストリートドラッグの大流行に直面している。

さらに、サンフランシスコに近いオークランドでは、銃撃事件が70%、殺人事件が90%増加している。オークランドの世論調査では、70%の市民が「街の生活の質が低下している」と回答した。また80%の市民が「ホームレス問題への対処は市の最優先事項である必要がある」と答え、88%が「ここ数年で問題が悪化している」と答えている。

もちろんこうした状況は西海岸だけではない。ニューヨークやワシントンなどの東海岸、そしてシカゴなどの中西部などでも似たような状況だ。犯罪率は激増している。

そして、こうした大都市圏から人々が安全な地域を求めて急速に転居しており、その転居先として選ばれたのが、先のワシントン州東部、オレゴン州東部、アイダホ州、モンタナ州の農村部、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、テネシー州の農村部や郊外なのだ。こうした地域では、住宅価格が急騰している。ちなみに筆者に連絡してきたアメリカの友人もこのオレゴン州に住んでいる。

Next: BLM運動とコロナで混乱した2020年と変わらぬ状況/トランプ再浮上?

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