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アメリカ「復興」の嘘。報道されぬ分断と暴力、バイデン政権への不満がこの夏爆発する=高島康司

2020年と変わらない状況

これは大統領選挙と「BLM運動」、そしてコントロールが効かなくなった新型コロナのパンデミックに見舞われ、混乱が拡大していた2020年と変わらない状況だ。昨年の9月17日に当メルマガで配信した第607回の記事にも書いたような事態が、いまだに続いているということなのだ。

2020年には、人種差別に反対する「BLM運動」は全米に拡大し、武装したトランプ支持の極右との衝突も発生した。死者も出ている。そうしたなか、警察が憎しみの対象になり、警察官への殺害や暴力が多発していた。

そして、「BLM運動」の要求を受け入れ、警察予算を大幅に削減した自治体も多い。この結果、警察官の辞職が相次いでだ。地域によっては、警察署長をはじめ、警察官全員が辞職した警察署すらもある。

こうした状況で、警察官の対応能力が低下し、その結果として犯罪率が急速に上昇する地域も多くなった。緊急時でも警察はやってこない。市民は自警団を結成して自己防衛すると同時に、護身用の銃の売れ行きが止らなくなっている。地域の銃のトレーニングセンターはいつも満杯で予約はできない状態だ。

そして、この状況に恐怖した富裕層や中間層は、都市の中心部に近い住宅地から、近隣の州の安全な郊外へと引っ越しを始めた。その結果、大都市圏の中心部の地価が下落し、郊外の地価が上昇するという逆転現象が起きているのだ。

国民の分断を乗り越え、統合を実現するとして就任したバイデン政権だが、どうもそのようにはなっていない状況だ。バイデン政権は、国民への直接給付を含む約200兆円にも上る巨額の経済対策を実施し、さらに190兆円のインフラ建設も計画されている。これらの政策によって、低賃金のエセンシャルワーカーでは、政府の給付が給与を上回る状況にもなっている。長引いた新型コロナのパンデミックによる貧困の激増は、かなりの程度この政策でくい止められた。

しかし、「BLM運動」による警察署の予算削減と人員整理はいまだに続いており、犯罪率の増加と富裕層や中間層の郊外移転の流れには歯止めがかかっていない。これがバイデン政権の巨額の経済対策がもたらした高いインフレ率の元で進行しているのだ。

この夏に始まったトランプラリー

しかし、次の大統領選挙に立候補する意志をすでに表明しているトランプからすると、こうした状況は追い風になっている。この夏からトランプ前大統領の活動が活発になっている。全米各地でトランプラリーを開催し、数千人の支持者が結集している。

たしかに一時期まで、いまだに2020年の大統領選挙に不正があったと主張しているトランプの支持には陰りが見えていた。トランプは明らかに一時期のような勢いを失っていた。ブログも閉鎖し、「Qアノン」も批判的な投稿が目立っていた。

「Qアノン」は、「テレグラム」という暗号メッセージングのアプリを通じて、トランプが6月25日のオハイオ州、ウエリントンで開催した「2022年(中間選挙)のための初の選挙集会」と称する場での演説に対する退屈と怒りを表明するメッセージを次々と投稿した。

「Qアノン」は、トランプが1月6日の米議会襲撃事件でトランプの呼びかけに応えて議会に押し寄せたために刑務所入りになった支持者たちに、一言も触れなかったと、トランプを攻撃したのだ。

しかし、その後のトランプの変わり身は素早かった。同じ週の日曜日に「フォックス・ニュース」のマリア・バーティロモが司会を務める「サンデー・モーニング・フューチャーズ」のインタビューのなかで、この集会についてコメントした。トランプは、支持者が議事堂を襲撃する直前にホワイトハウスの近くで行われた集会に焦点を当てて答え、次のように述べた。

「大規模な集会が開かれた。実際には、誰も知らなかったが、集会が開かれ、非常に多くの人が集まった。私がこれまでに講演した中で最大規模の集会は、愛国者たちによって開かれたのだ。そして、彼らは私に話してくれないかと頼んできたので、私は話した。そしてそれはとても温和なスピーチだった」。

またトランプは、インタビューのなかで、国会議事堂に侵入し、議員たちが暴徒から逃れている部屋に入ろうとして撃たれた支持者のアシュリ・バビットが、民主党の著名な幹部の警備主任に殺されたと示唆した。「誰がアシュリ・バビットを撃ったのか、彼らは知っていると言ってやろう 」とトランプは主張し、「人々は その人物を守っている 」と主張した。また、この銃撃事件の真相は「明らかになるだろう」と述べた。トランプはバビットを 「無実で、素晴らしく、信じられない女性」と称賛した。

Next: 帰ってきたトランプ。このまま勢いを取り戻すか?

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